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*「ここは 森の中の村
ウッドパルナです。
*「なんでも 神さまが復活したって
ウワサを聞いたと思ったら 今度は
それが 魔王だったって話だ。
*「このままじゃ 世界は……
くそおっ!
どうすりゃいいんだよおっ!
マリベル「あたしたちだって
ダマされたんだから
そりゃやっぱ ダマされるわよね。
マリベル「神が魔王だなんて
普通 思いもしないわよね。
*「村の外には
魔物がいるのだそうです。
*「このあたりにまで 魔物が
出るなんて……
生まれて はじめてだわ。
アイラ「わたしたちは
旅が長いから いいけど……
アイラ「普通の村の人たちは
どんなに 弱い魔物でも
やっぱり 恐ろしいわよね。
*「バウバウッ!!
*「おとうさんがね もしかしたら
世界が終わるかもって
しつこく 言うの。
*「世界が 終わっちゃうなんて
そんなわけないじゃんねー?
*「私たちが 神と信じてきた存在は
じつは 神ではなく
魔王だったのです。
*「ですが だからといって
信じる心を 捨ててはいけません。
それでは 魔王の思うツボですわ。
*「向かいに見えるエスタード島が
とつぜん消えたのは なんでも
魔王の しわざだったそうです!
*「ということは 次にはこの村も
魔王にねらわれて……!?
あなた なんとかしてくださいよ!
メルビン「エスタード島が この世界に
戻ったことまでは
知らない様子でござるな。
メルビン「なんにしても 魔王を
倒さぬことには 何が起こっても
不思議は ないでござる。
*「仲間の 旅の商人から聞きました。
とある戦士が 魔王退治に
旅立ったそうですよ。
*「こんなとき 何もできないのは
男として くやしいですよね……。
と それはさておき……
(武器と防具の店)
*「この村にいる 戦士さまも
こんなときこそ 魔王退治に
行けばいいのに……
*「じいさんが 帰ってこんのお……
外で 人にめいわくを
かけてなければよいのじゃが……
*「やっと ここに来られましたか……
お待ちしておりましたぞ。
選ばれたる 勇者の方々……
*「世界を この恐怖から救うことが
できるのは まぎれもなく
あなたたちだけです。
*「さあ 時は満ちたり!
今こそ魔王に われら人間の強さを
知らしめるのです!
*「そこのじいさん さっきから
来る人来る人に 同じことを
言ってるけど だいじょうぶかな?
*「魔王がいることが
こわくないかですって?
ええ こわくありませんわ。
*「魔王退治に向かった 戦士さまが
かならず 魔王を倒してくれると
信じていますもの。
アイラ「アルス わたしたち
もう あとには ひけないわね。
アイラ「世界中の人たちが
わたしたちのこと
信じてくれるんだもの。
*「うわあっ!!
*「な…ななな……なんだよ!
ビックリして 落っこちるとこ
だったじゃないか!
*「うちの人は 村の戦士なのですが
急に お腹をこわしてしまって……
*「ざんねんだわ。
魔王を倒し 名を上げる
チャンスだったのに……
*「ううっ!
腹が……腹がいたい……!
マリベル「…なっさけないわねー。
マリベル「あの戦士と くらべたら
アルスの方が
まだ ちょっとは マシよね。
*「にゃ〜ご……。
*「あんたら 強そうだなや。
あんたらに 折り入って
たのみが あるだよ。
*「おねげえだ! 魔王を倒してけろ!
魔王をたおして 世界と オラの
ほがらか農園を 守ってけろ!
ガボ「ほがらか農園は
どうでもいいけど オイラたちは
魔王を倒すんだよな アルス。
*「なんだ? おまえらも
ここに 逃げ込んできたクチか?
*「なんでも 魔王とかってのが
世界を 破滅させるらしくてな
この穴の中なら 安全なんだと。
*「その辺にいた連中も みんな
穴の中に 入っていっちまったぜ。
アイラ「鉱山の男といえども
相手が魔王じゃあ 手も足も
出ないってところかしら?
アイラ「アルス わたしたち
もっと 急いだ方がいいのかも
しれないわね。
*「ガゴガガガガガ……。
*「むう……。ここも出口では
ないのか。オレは いったい
いつになったら 外に出れるのだ?
*「ふう……。
ここまで 奥に入りこめば
世界がほろんでも 安心だな!
メルビン「こんな 洞くつの中を
安全と思っているなど……
兵士の姿が 泣くでござるな。
*「やれやれ……。
鉱山の男が この調子では
まったく 情けないな。
*「魔王 魔王と言いますが
いったい どんな わざわいを
われわれに 与えるのでしょうな…
*「み……見つけたぜ!
*「魔王から 逃げるためとはいえ
こんな奥まで 入りこんできて
大正解ってヤツだな!
*「やっと もとの平和なエンゴウに
もどったと思ったら こんどは
魔王が あらわれたですって?
*「それじゃ もしかして
今までのことは みーんな
その魔王が やってたってわけね!
ガボ「魔王は オイラたちが
ぜったい やっつけるぞ!
マリベル「そうよね あいつが
すべての元凶 なんだわ。
メルビン「魔王を たおさぬかぎり
真の平和は やって来ないので
ござるよ。
*「炎の神なんて じつは いなくて
炎の精霊ってヤツが 火山に
いたんだってな。
*「魔王を やっつけてくれるなら
神でも 精霊でも なんでもいい!
とにかく たすけてくれーっ。
マリベル「神も炎の精霊も
もう いないわよ。
マリベル「いるのは このマリベルと
その仲間たちだけね!
アイラ「神さまのたすけも
精霊さまのたすけも もう
ないのかも しれないわ……。
*「……朝を むかえられる
ほしょうは ないけど
それでもいいなら 泊まっておいき。
(宿屋)
*「うーん うーん……。
*「どうりで へんな気分が
なおらないわけだ。
魔王なんてものが いるんだもんな。
*「くそーっ もうすこし ボクが
大きかったら 魔王なんて
コテンパンなのに!
メルビン「アルスどの
未来ある 子どもたちのためにも
魔王を たおすでござるよ!
*「やっぱりね あたしは
おかしいと 思ってたんだよ。
*「あの神さまは あたしたちを
たすけてくれなかったからね!
*「死ぬ前に いちどくらい
わたしの手料理を カレに
食べさせて あげたかったな……。
*「おれっちの デリシャスシチューを
食えば 魔王だって ホッペタ
落っことしちまうぜ!
*「モンダイは 魔王がシチューなんて
食うのかってとこだけだな。
ガボ「オイラが 魔王だったら
シチューどころか なんでも食うぞ!
*「武器を売るなってのは
魔王のおふれ だったってわけか。
だったら 守るわけないっての!
(武器と防具の店)
イルマ「わたしたち みんな
死んじゃうのかな……。
イルマ「今まで そんなこと
かんがえたことも なかった……。
パミラ「わしも びっくりしておるよ。
あの神が 魔王の いつわりの姿
だったとはね。
パミラ「でも わしは この世界は
すくわれると 信じとるよ。
パミラ「見えたのさ。
あんたたちが 魔王に
たちむかっていく姿がね。
パミラ「その戦いの決着までは
見えなかったが…… わしは
あんたたちを 信じとるよ。
アイラ「わたしたちが 魔王を
たおすしか 道はないってわけね。
いいわ やってあげようじやない!
マリベル「ちょっと 決着が
見えなかったって どういうことよ!
メルビン「勝つか 負けるか
それは わしたちにも わからぬで
ござるからな。
*「本家本元の神が 魔王だったなんて
わらい話にも ならないよ。
*「炎の神や 大地や風の神が
なんとかしてくれりゃ
いいんだけどねえ。
*「やっと 声が出るようになって
うたえるように なったのに……
*「とても うたをうたう気分には
なれないな……。
*「おれも すこしは うでに
覚えがあるが 魔王が相手ではな。
*「こうして 酒をかっくらって
時をまつしか ないんだ。
すくいの時か ほろびの時か……。
*「ダンスダンス
ダダダン ダンスッ!
*「話しかけないでっ!
なにも かんがえず 死ぬまで
おどっていたいの。
*「神が じつは 魔物どもの
親玉だったってことなんですよね。
*「ああ この世には ほんとうの
神は いらっしゃらないのか!?
*「この聖なる炎なら 魔王をも
やきはらうことが できるのでは
ないでしょうか?
*「いえ ムリですよね。
なんといっても 相手は
魔王なんですから……。
マリベル「魔王の 丸焼きなんて
あたし 見たくもないわよ。
*「魔王じゃない ほんとの神さま
お願いします!
*「あたしたちを たすけてください。
なんまんだぶ なんまんだぶ……。
*「精霊も神も われら人間から見れば
同じように おおいなる存在です。
祈りましょう……。
(教会)
*「まだ なにか おこるなと思ったら
やっぱりだぜ!
*「よりによって 魔王が
あらわれるなんて 最悪だな。
*「うーいっ ふろ ふろ……。
*「思いきって はいっちゃった。
いいの もう ハダカを
男の人に 見られても。
*「だって 明日は もう
来ないかも しれないもの……。
アイラ「最後の戦いの前に
身体を 清めるのも
いいかもしれないわね。
マリベル「あたしも 温泉
入っとけば 良かったかな……。
メルビン「こういうときで なければ
わしが お背中でも流して
さしあげられたで ござるのに。
*「とうとう 念願の若い女の子が
はいってきたよーっ。
もう 死んでも いいかも!
マリベル「……。
アイラ「……。
メルビン「女子と フロに
入ったくらいで 情けない……。
男子たるもの もっと……でござる。
*「はああ…… カラダは
あったまるけど 心の中の寒気は
とれやしないな。
*「ぐうぐう……。
*「魔王が あらわれたって聞いたら
奥さま また たおれられちゃって。
*「あなたたち 魔王も ぱっぱっと
たおしてくれないかしら。
*「うう……。
村長「封じられた大地は もとの世界に
無事もどりましたが 新たな恐怖が
この地を つつんでおります。
村長「魔王という存在が どれだけの
チカラをもっているのかは
わかりませんが……
村長「うわさによれば 世界を
ほろぼすことも できると聞きます。
村長「神が魔王であったということは
神は今 この世にいないということ。
希望は ないのでしょうか……。
アイラ「神さまは わたしたちの
心の中に いつだって いるのよ。
それを忘れちゃダメよ アルス。
マリベル「なに いってんのかしら。
ここに希望の星 マリベルさまが
いるじゃないの!
メルビン「アルスどの わしたちが
みなの希望になるよう 努力
しなくては ならんでござるぞ。
*「ここからでは まったく見えんが
魔王の住むという居城は
あっちのほうかのう。
*「火山から とんでいった
炎の玉は なんと 炎の精霊だった
……って 話なんですよ!
*「びっくりしちゃったなあ。
あれが そんなに スゴイもの
だったとは。
*「おお あんたたちか!
どうも 気になってな。
あれから ずっと ここにいるんだ。
*「今のところは おかしなことは
なんにも おこってない。
ひとまず 安心してくれ。
アイラ「そうか あの人は
魔王のこと 知らないのね。
マリベル「おかしなことが なんにも
おこってないとは お気楽なことね。
ガボ「うひゃあっ! この町来るの
メチャメチャ 久しぶりだぞ!
アイラ「ふう。
どこの町にも おもくるしい空気が
ただよっているわ……。
マリベル「ふ〜ん。
ここに来るの 久しぶりだけど
町の様子は 変わってないようね。
メルビン「着いたで ござるな。
*「ク〜ン ク〜ン……。
*「ここは オルフィーの町じゃ。
*「旅のお方なら 知っておろう。
今 この世界が 危ないという
うわさは 本当なのじゃろうか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
*「なんと! やはり本当なのじゃな! *「すると 神だと思っていたのが *「おおっ! まことの神よ! |
いいえ |
*「ほっ。 |
*「平和になったり 終わりが来たり
まったく世の中 いそがしいやね。
*「どっちにしても 俺たちにゃ
どうにも できやしないんだ。
じたばたしたって しょうがないさ。
マリベル「あきらめる奴なんて
放っておきなさいって言いたいけど
なんとかしなくちゃね アルス!
ガボ「ガウーッ!
もっと じたばたしろー!
アイラ「そうよね……。
普通の人なら みんなこうやって
あきらめちゃうかも しれないわね。
メルビン「おやおや。
あきらめの 境地でござるかね。
*「はあ なんてこったい。
もうすぐ この世界が
なくなっちまうらしい……。
*「もう 次の祭りで 騒ぐことも
できなくなっちまうのかねえ。
*「はるか大昔に この町は
とっても おそろしい魔物に
おそわれたことが あったのよ。
*「なんでも 町中のみんなが
動物の姿に 変えられちゃってね
そりゃあ大変だったらしいわ。
*「それを 救ってくれたのが
伝説の白いオオカミさんなのよ。
*「ああ……。
もう一度でいいから わたしたちを
助けては くれないかしらねえ。
マリベル「まったく どうして
白いオオカミばっかり もてるのよ。
あたしの方が 頼りになるってばさ!
アイラ「この町での 白いオオカミって
まるで神のような 存在なのね。
ガボ「まかしとけって。
オラ 何度でも がんばっちゃうぞ!
ワオオーンッ!!
メルビン「わっはっは!
ガボの人気は すごいでござるな!
*「さいきん 町の外には
魔物がいっぱい いるの!
*「ときどき 町の外に出た
ニワトリさんたちが
食べられちゃうのよ。
*「ひ〜ん! 魔物が 町の中にまで
入って来たら どうしよう!?
メルビン「アルス。
やはり早いところ 人々の不安を
取りのぞかねば いかんでござるな!
ガボ「もし 魔物が入って来たら
オイラが ポイ ポイッと
ほうり出してやっから 安心しろ!
アイラ「大丈夫よ。
みんなで守れば 町の中には
魔物は 来ないわよ!
マリベル「アルス!
やっぱり 行くっきゃないわね
魔王退治にさ!
*「ああっ まったく!
こいつには あきれたよ!
*「ずうっと 寝てると思ったら
エサだけは こっそり
食ってるんだよ!
*「こいつう! ウマのくせに
タヌキ寝入りなんか するなー!
*「ゴゴゴ ゴヒーン……。
*「コケーッ コケーッ!
*「むかし町を救った 勇者さまの
仲間のなかには 動物のことばが
わかる人がいたんだって!
*「ぼくも 動物さんのことばが
わかったらいいのになあ……。
*「そしたら 伝説のオオカミさんに
お願いして にくたらしい魔王を
やっつけてもらうのに!
アイラ「わかったわ ぼうや。
わたしが 白いオオカミさんに
伝えて あげるからね!
マリベル「伝説のオオカミさんより
この あたしに頼んだ方が
まちがいないわよ!
ガボ「よしっ わかったぞ!
必ず オイラが 魔王を
ぶっ倒して来るからな!
メルビン「くうっ……。
子供ながらに 泣かせるでござる。
メルビン「魔王は 必ず
この メルビンおじちゃんが
倒してみせるで ござるよ!
*「ウーッ ワンワンッ!
水にうつった自分の姿に
吠えているようだ!
*「おいおい あんたら のんきに
旅なんかしてる場合じゃないだろ。
*「もう世界は どうなっちまうか
わからないんだぞ。
*「できれば 親のところに
いてやんなよ。
それが親孝行って もんだぜ。
ガボ「魔王のせいで 何だかみんな
あきらめちゃってるぞ。
とんでもないやつだな 魔王って!
マリベル「親孝行より 魔王退治!
それが結局 いちばんなのよ!
アイラ「みんなを ここまで
不安に 落とし入れる 魔王……。
許せないわね!
*「うわっ! おどかすなよ!
魔物が入って 来たかと
思ったじゃないか!
*「コッコッコ……。
*「知ってるざますか?
もうこの世は おしまいざます!
*「恐ろしいざます!
空に浮かんで見えた あの神さまは
じつは 魔王だったざますよ!
マリベル「よくないね アルス。
みんなが 同じように取り乱してる。
これって魔王の 思うツボだわよ!
アイラ「大丈夫!
世界は 終わらない。
あきらめちゃだめよ!
ガボ「うん オラも おどろいたぞ!
あいつが 魔王だったなんてさ!
メルビン「やはり あの出来事が
人々に 与えたショックは
相当なものであったでござるな。
*「うちの子が こわがって
ベッドから出てこないんです。
*「何か おいしいものでも 作れば
出て来てくれるかと思って
お料理しているの。
マリベル「かわいそうに……。
みんなの 不安は
相当なものだわね……。
ガボ「魔王のせいで 何だかみんなが
こんなに こわがってるぞ。
とんでもないやつだな 魔王って!
*「うわあ! くるな くるなー!
魔物 あっちいけー!
メルビン「こうして 寝ながらも
おびえるとは……。
わしは ふびんで たまらんでござる!
*「もし この時代にも
伝説の白いオオカミさんが
いてくれたら……。
*「きっとまた 世界を平和に
してくれるはずなのに!
ガボ「まかしとけって。
オイラ はりきっちゃうからな!
ワオオーンッ!!
*「おおっ みなさんか……。
オルフィーの町に ようこそ。
*「ニセの神の正体が あばかれてから
町のみなは 毎日不安の中で
暮らしております。
*「情けないことに この町の長として
おびえる者たちに 何ひとつ
してやることができませんのじゃ。
マリベル「さすがに いまは
バニーを 追いかけるのは
やめたみたいね。
ガボ「まかしとけって。 魔王は オラが
必ず ぶっ倒してやるからな!
ワオオーンッ!!
*「ハァーッ フウーッ!
ミミ「ねえねえ 魔王ってさ
しょせん 王さまには
違いないわよね。
ミミ「うっふ〜ん!
だったら わたしの魅力で
ちょっと 攻めてみようかしらん。
*「なんだか最近 長老さまが
沈んじゃってるんです。
*「若い女の子を 追いかけるのも
困るっちゃあ 困るんだけど……
*「やっぱり 長老さまには
いつも元気で いてもらわないと
いけないんですよ。うん!
ガボ「ガルルル……。
アイラ「気をつけて アルス!
この洞くつの 魔物の気配は
かなりのものよ!
マリベル「は…はあ はあ。
もう少し ゆっくり歩いても
ばち当たらないんじゃない!
メルビン「あたり 全部に
気を はりめぐらせるでござるよ!
油断は 命取りでござる!
*「ああ… アルスさん!
もう 怖くて 怖くて
逃げ出して来て しまいました。
*「でも洞窟の中も 魔物だらけで
もう 足がすくんじゃって
これ以上 動けません。
*「わたし 感じるんです。
あの強大で 邪悪な力を!
*「き…気をつけて アルスさん!
敵は ひとすじなわで行くような
相手ではありませんよ!
ガボ「おめえも 気をつけろよ!
こん中も 魔物だらけだからな!
メルビン「やはり この者も
感じているでござるな。
強大な 悪の気配を!
アイラ「ひょっとして その人が
話に聞いてた まもの君?
ホントだわ 信じられないわね!
マリベル「あんた いつまでも
こんなところで ビビッてないで
さっさと 逃げなさいよ!
ガボ「湖を わたってくる風が
オイラのきらいな 魔物の
においを はこんでくるぞ。
マリベル「仕事なんか 投げ出して
とっとと 逃げればいいよ。
マリベル「それとも ここの人たちは
魔王が恐くないのかしら?
メルビン「非常時だというのに
誰ひとりとして 持ち場を
はなれていないでござるよ。
メルビン「ブルジオどのは 部下に
めぐまれたかたでござるな。
*「ケッ なにが魔王だ。
おとといきやがれってんだ。
*「オレっちはな ブルジオ様の
船着き場を守るっていう
大役を おおせつかってんだ!
*「いがいと ここは穴場だよ。
魔王の ひょうてきになるのは
人口の多い町だと聞いたからね。
*「ううっ 魔王も恐いけど
そのへんを うろついてる
魔物の方が もっと恐い……。
アイラ「お屋敷も 見た感じでは
魔王が あらわれるまえと
たいした変化が ないようね。
ガボ「おー ほっとしたぞ。
ブルジオの屋敷は まだ魔王に
こわされずに 残ってたんだな。
メルビン「魔王の魔力を もってすれば
世界の ありと あらゆる場所を
のぞくことが できるでござる。
メルビン「へんぴな場所であっても
いつ何時 魔王に ねらわれても
おかしくないでござるよ。
*「もしも魔王が ブルジオさまの
宝物をねらって ここに
攻めてきたら どうしよう。
*「どうぜ 魔王に殺されるなら
死ぬ前に いち日でもいいから
お休みが ほしいっぺよ。
*「ううっ せんぱいが……。
せんぱいが 日に日に
正気をうしなっていく。
*「魔王や魔物の きょういに
おびえながら 暮らしてんだ。
オレだって 気が狂いそうさ。
メルビン「見えざるものに対する
恐怖がつのって 神経が
まいってしまったようでござるな。
アイラ「ああ……おそれていたことが
ついに おこってしまったわ。
アイラ「人々が 絶望するまえに
はやく 魔王を倒さなくては。
ガボ「オイラ 見てられないよ。
はやく魔王を倒して 世界中の
人たちを 安心させてやろうぜ。
*「どうせ世界は ほろびるんだろ。
だったら 働くのは もうヤメだ。
*「どうせ まじめに働いたって
やがて来る 死を待つだけだ。
ううっ…魔王が 恐い。
*「ホントに 危なかったのよ。
旅先から 引き上げてくるのが
少しでも おそかったら……。
*「帰りの道で 魔物のむれに
おそわれて あたしは
殺されていたかもしれないわ。
*「魔王のこととか
いらんことを 考えないよう
休まずに ずっと働いています。
*「料理をしている 間だけですよ。
気が やすまるのは……。
*「魔王が神に 化けていた
ということは この世に神が
いないってことですよね。
*「いったい だれに助けを
もとめればいいんでしょう?
ブルジオ「おお おまえたちか!
よくぞ あそびにきてくれた
と言いたいところだが……。
ブルジオ「はやく 魔王を倒してくれ。
わしは どうしても 魔王の居城を
見学したくて たまらんのだ。
ブルジオ「だが こればっかりは
いくら大金を つんだところで
かないはせんしなあ。
ブルジオ「はやく 平和になって
魔王城を 自由に見学できる日が
こないもんかのう……。
マリベル「そんなに魔王城を
見学したいなら いますぐ
つれてってやりましょうよ。
メルビン「ブルジオどのは
別の意味で キモのすわった
おかたでござるなあ。
*「あん? 魔王だって?
もし おそってきたとしても
ぜんぜん心配ないね。
*「めずらしい宝物を いくつか
わけてやれば 魔王だって
みのがしてくれるさ。
アイラ「自分だけが 助かれば
それでいいだなんて ひどいわ。
だけど それ以上に……。
アイラ「ひとの心を みにくく
ゆがめる 魔王を これ以上
ほうっておけないわね。
マリベル「金品を 差しだして
命ごいとは いかにも金持ちの
やりそうなことね。
*「もうじき 世界はおわるのよ。
そう考えると はたらくのが
バカらしくってさぁ。
ガボ「あれ みんなして
どっかへ 出かけたのか?
アイラ「すでに 魔王の手が
世界を おびやかし始めたと
いうの!?
マリベル「ちょっと なんで
みんな いないのよ!
ま まさか…ね。
メルビン「アルスどの!
これはもう のんびりとは
していられんで ござるよ!
*「な なんで 誰も いないんだ。
せっかく 行商にやって来たって
いうのに……。
*「はっ! こ これは もしかして
あの魔王が やったんじゃ!!
*「ひえー おたすけー!!
マリベル「町の人たちは どこへ
行ったって いうのよ アルス!
アイラ「ここままじゃ いつか
ほかの町も…。
アルス 急ぎましょう!!
ガボ「どうせなら オイラたちに
なんか 売ってくれれば いいのに。
メルビン「だいじょうぶ アルスどの。
きっと 町の者たちは 魔王に
とらわれただけで ござるよ!
*「オレは よう兵ぼしゅうの
おふれを聞いて やって来たんだが
これは いったい どういうことだ!
*「城には 人っ子ひとり いやしない。
ウソだと思うんなら あんたの
その目で たしかめてみるんだな。
ガボ「オイラたちも よう兵に
なったこと あったよなあ。
アイラ「フォロッド王は 魔王に対して
戦いのじゅんびを すすめて
いたようね。
マリベル「そうか 王さま
また よう兵を集めようと
していたのね…。
メルビン「わしは よう兵とやらは
あまり 好きではないでござる。
金のために 戦うなどと…。
マリベル「なんて 強い風なの。
こんなとこにいたら 砂ぼこりで
服が よごれちゃうわ!
ガボ「う〜 動物たちの気配が
ほとんど しねえぞ。
ガボ「このあたりの 魔物どもに
みんな やられちまったのかなあ。
メルビン「こうしてる間にも
人々は 魔王の きょういに
おびえているはずでござる。
アイラ「はやく 魔王を倒さないと
世界中の町が ここみたいな
廃虚になってしまうわ。
話しかけても 返事はない。
どうやら ただの しかばねのようだ……。
アイラ「見た目は かわらないけど
人々の すさんだ気持ちが
わたしに 伝わってくるわ……。
マリベル「あんたねぇ いま世界が
おかれている 状況ってやつを
ちゃんと 理解してんの?
マリベル「こ〜んなハーブ園で
のんびりしてる場合じゃ
ないでしょうーがっ!
ガボ「よかったぁ。
まだハーブ園には 魔王の手が
のびていないようだぞ。
メルビン「ぼやぼやしていると
ここの人たちも 魔王のエジキに
なってしまうやもしれぬ。
メルビン「アルスどの。
もはや 一刻のゆうよもござらん。
魔王の居城へ 急ぐでござる。
*「あるところで 町にいる人間が
まるごと消えたって話よ。
やっぱり 魔王のしわざかしら。
*「ご主人ばっかり ズルイぞ。
オレにも かわいいメイドを
追っかけさせろい!
マリベル「魔王に おびえて 毎日
メイドを 追っかけてるだけなんて
ホント お気楽なもんよね。
メルビン「生きる希望を すっかり
みうしない ご婦人のシリを
追いかけるだけの毎日……。
メルビン「ちょっとの間でも
かまわぬから わしと
入れかわってほしいでござるよ。
*「うふふふふふふふ。
さあ 私を つかまえて
*「ノン! 旅のおかた。
ぼくの ゆくてを はばむな。
*「どうせ みんな死ぬんだ。
こうなったら 死ぬまで
メイドを追い続けてやる。
*「世界中 どこへ逃げたって
魔王の きょういからは
のがれられないんだ。
*「だったらオレは このハーブ園と
運命を ともにするぜ。
*「いつか むくわれると思って
まじめに はたらいてきた
オラが おろかだったべ。
*「世界が ほろぶと分かっていたら
オラは まよわず 笑わせ師に
転職していただよ。
*「今後は 魔王のために祈りを
ささげると ちかいましょう。
*「そうすれば 命だけは
助けてくれるかも……。
アイラ「神への信仰を 捨てるなんて
それこそ 魔王の おもうつぼよ。
アイラ「でも みんながみんな
わたしたちみたいに強くない……。
アイラ「アルス みんなのためにも
はやく 魔王を倒しましょう。
*「魔王を信じることで
生き残れるなら オレは
神への信仰を捨てるよ。
*「ほろびの日は 突然やってくる。
それは 今日かもしれないし
あしたかもしれない。
*「どこかの町では ひとが
まるごと消えたってウワサだ。
次は ここかもしれんな……。
ガボ「世界が ほろびるなんて
言ってると ホントのことに
なっちまうぞ。
マリベル「なさけない人たちね。
魔王 魔王って オトナのくせに
ギャーギャーさわいじゃってさ。
マリベル「こんな人たちを 見てると
あたしたちの士気が 下がるわ。
メルビン「世界が ほろぶ。
こんなウワサが まことしやかに
流れていたとは……。
メルビン「人々が 希望を失うまえに
早々に 魔王を倒さねばなるまいな。
*「神が 魔王だったなんて
なにかの まちがいですわ。
*「きっと ほんとうの神は
どこかで復活なさってるのよ。
私は そう信じてます。
*「どっかの島で 英雄ってのが
生まれて そのおかたが 魔王を
退治してくれるって聞いたよ。
アイラ「ニセの英雄が みんなの希望に
なってるなんて 意外ね。
メルビン「ふむ 思ったいじょうに
メザレの ニセの英雄のウワサが
広まってるようでござるな。
*「にゃー。
*「思うんだけどさ どっかのバカが
神さまを 復活させたのが
そもそもの まちがいだったのよ。
*「にせの神を 復活させた部族って
こうなることを わかっていて
計画を実行したのかしら……。
アイラ「たとえ ユバールを
悪者だと しんじこむ人が
いたとしても……。
アイラ「いちぞくの ほこりにかけて
かならずや ユバールのめいよを
回復させてみせるわ。
*「世界が ほろびるっていう
ウワサのせいで みんな
おかしくなっていくのよ。
*「あたしも いつまで 正気で
いられるか 自信がないわ。
*「あーはっはっはッ!
もうすぐよ もうすぐなんだわ。
ほろびの日は すぐそこよ。
*「あたしの夢が なにひとつ
かなわなかった こんな世界
はやく ほろびちゃえ!
*「ウワサでは 世界が
ほろびるときは 太陽が消え
闇につつまれてから……。
*「毒をふくんだ 死の風がふいて
すべての生きものは もだえ
苦しみながら 死にゆくそうよ。
*「わしゃ 生きるのに つかれた。
いつなんどき 魔王に生命を
うばわれたって かまわんぞい。
*「ンモー!
*「るろうの部族の 儀式により
われらが神は たしかに
よみがえったのです。
*「それでも 私たちのまえに
姿を現さないのは なにか
事情が あってのことでしょう。
*「私たちは よみがえった神が
降臨する日を願って 毎日
祈りを ささげています。
*「食べ物を そまつにしません。
きらいな物も ちゃんと食べます。
ひとの悪口を言いません……。
*「だから神さま おねがいだから
はやく出てきてください。
*「神は ぜったいに この世界に
よみがえってるはずです。
*「おそらく 降臨するさいに
魔王の こそくなワナに はまり
自由を うばわれたのでしょう。
*「魔王が神に 化けていたとしても
そのことが 神が復活しない
理由には なりませんわ。
*「私たち人間を だまして
神がいないと 思いこませるのが
魔王の 策略なのでしょう。
*「毎日 まじめに祈ってるのに
よみがえった神さまは ちっとも
出てきてくれやしない。
*「みんなクチには 出さないけど
ほんとに神さまが 復活してるのか
どうかなんて わかりゃしないわ。
*「この世に よみがえりし神は
悩んでおられるのでしょうか。
*「われら人間が ほろびの運命を
まぬがれ この地で 生き残るに
あたいする存在か 否かを。
*「その決断を しかねているから
神は姿を 現さないのだろうか?
それとも人間を見捨てたのか……。
*「あんたたも どこかに
逃げようと してるのかい?
けど 無駄だな。
*「世界中 どこにいったって
魔王から 逃げられるもんじゃない。
もう おしまいだよ。
*「あの おじいちゃん かなりの
よっぱらいよね。
*「まあ よっぱらいたくなる気持ちは
わかるけどね。
*「あきらめちゃいかん!
*「大魔王が 生きていたということは
神もまた 生きているかも知れんぞ!
マリベル「ふふふ だれもかれもが
魔王を こわがってる今こそ
チャンスよ アルス。
マリベル「いま あたしたちが
魔王を倒せば かくじつに
スーパースターになれるわ。
ガボ「魔王だ 魔王だって
みんな さわいでばっかで
全然 たよりないぞ。
アイラ「こういう 非常時にこそ
日ごろの 修業の成果が
ためされるってわけね。
メルビン「魔王の出現に どこも
ハチの巣を つついたような
おおさわぎでござるな。
*「話は 聞いています。
精霊たちを 復活させたのは
あなたがた だったのですね。
*「ありがとうございます。
しかし ほんとうの戦いは
これからですね!
*「ふたたび 緑ゆたかな大地に
もどれたのも 精霊たちの
おかげですね。
*「きっと われらの祈りが
精霊に とどいたのでしょう。
*「復活したはずの神は じつは
魔王が 姿をマネただけの
いつわりの存在だったとは……。
*「真実を知った いまでも
それを どう受けとめれば
よいのか わかりません。
*「ダーマを 闇の世界に
おとしめた 元凶たる魔王は
いまだ けんざいじゃ。
*「精霊の加護を得た そなたらの
チカラで なんとしても 魔王を
うちほろぼしてくれい。
*「そのためには ダーマは協力を
おしまんぞ。さてと わしが
できることはといえば……。
(転職)
*「なんと バチあたりな!
よりにもよって 神の姿を
かりて 人を あざむくとは。
*「神にかわって だれか 魔王を
さばいてくれないだろうか。
*「魔物が あらわれたのも
世界が闇に とざされたのも
魔王の しわざなんだってな。
*「人間は ほろびませんわ。
神は なくとも 私たちには
精霊の加護が ありますもの。
*「そして 精霊を復活させた
ゆうかんな戦士たちもいます。
*「たぶん ダーマ神殿が 闇に
とざされたのは 魔王にとって
めざわりだったからでしょう。
*「人を きたえるのが ダーマです。
魔王も 人間に強くなられては
やっかいなのでしょうね。
*「バアさんは ごかいしちょる。
わしはギャルになって 自分で
ぱふぱふ してみたいんじゃよ。
*「ギャルになるまでは ちかって
こきょうの土は ふまんぞ。
*「わしというものが ありながら
こげなとこで 若いおなごと
たわむれおってからに。
*「ごっ ごかいじゃよ バアさん。
わしゃあ ぴちぴちギャルに
なりたいだけなんじゃよ!
*「あなたにも ウッフン
*「さいしょは 踊り子に
なるつもりだったけど
やっぱ やめたわ。
*「あたし ぶとう家になるの。
アチョー アチョーって 魔王に
チョップしてやるんだから。
*「バカにしやがって!
今まで 魔王を神さまと思って
あがめてたってのかよ。
*「気づきもせず 魔王に
祈りを ささげていたなんて
キモチ悪くて ヘドがでるぜ。
*「これはオレの予想なんですが
聞いてくれるかい?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
*「正体が ばれてしまった魔王は *「魔王が 本気をだしたら |
いいえ |
*「そんな……聞いてくれたって |
*「はぐ はぐ はぐ はぐ
もぐもぐ もぐもぐ
ガツガツガツガツ……。
*「もぐもぐ もぐもぐ。
ここで 食うのをヤメたら
男が すたりますよ。
*「ダーマでの 情報あつめは
まんぷくになってからでも
おそくはありませんぜ アニキ。
神官長「人間の 神への信仰心を
もてあそんだ魔王が にくい。
神官長「にくいからこそ
なんとしてでも 魔王を
人の手で たおしたい。
神官長「魔王を神と あがめてしまった
われらの無念を はらすには
それしかないでしょう。
アイラ「ねえ アルス。
こんなとこに いったい
なんの用が あるっていうの?
マリベル「くさいから ここには
近づきたくないって あたしは
なんども言ったじゃない。
マリベル「ほんと アルスって
ちっとも あたしの言うことを
きこうとしないんだから!
ガボ「エテポンゲのヤツ
元気に やってるかなあ。
マリベル「い〜だ!
あたしは 今 キゲンが悪いの。
話しかけないでよね。
マリベル「アルスは あたしの
言うことなんか ち〜っとも
聞いてくれないんだからさ。
メルビン「ほう アルスどのは
山賊のかしらに ひじょうに
お世話になったでござるか。
メルビン「なら 最終決戦のまえに
あいさつしておくでござるよ。
今生の別れに なるやもしれぬ。
*「だれでもいい。
魔王を たおしてくれ!
*「オレたちが 心安らかに
悪さができる 平和な世界を
早く とりもどしてくれい!
*「心配すんなって。
あしたになれば 魔王なんざ
ほろびてっからよぉ。
*「て きのうも同じことを
言ってたんだよな オレ……。
エテポンゲ「ヨヨヨ……みんなが
また 言葉の ぼうりょくで
ウチを いぢめますのん。
エテポンゲ「なんでも 外で
ウチに そっくりな魔物を
見たって言いますのんね。
エテポンゲ「魔物に似てるだなんて
あまりのショックで
ウチの心は 血みどろよん。
ガボ「みんな ひどいぞ。
エテポンゲが みにくいからって
いじめるなんて あんまりだ。
アイラ「わたしも エテポンゲさんに
とっても よく似た魔物と
戦ったことがある気がするわ。
*「告白せねばなるまい。
オレは あいぼうを ダーマに
おきざりにしてしまった。
*「けど アイツが悪いんだ。
食い意地はって ちっとも
仕事しねえアイツがな。
*「エテポンゲが 盗んだ帽子は
アズモフとかいう
学者のものだったんだ。
*「あんな帽子を かぶっただけで
たちまち かしこくなるなんて
今でも 信じらんねえよ。
*「魔王に たちむかえるのは
お前らしか いねえ。
*「オレさまは あの石版を
お前らに たくしたときから
そう思ってたぜ。
*「もし 魔王が あらわれたら
まともに 相手できるのは
お前らだけだってな。
マリベル「山賊のかしらなんかに
魔王を倒せって 言われてもさ
いまいち その気になれないわね。
メルビン「魔王を倒したあとは
お前たちでござる!
メルビン「そう言って おどせば
全然こりない 山賊のかしらも
少しは 改心するでござろうか。
マリベル「ああ もう!
きゅうに話しかけないでよ。
マリベル「魔王を倒した あたしが
いかにして 有名人になるかという
計画を ねっていたのにぃ。
アイラ「魔王は もちろんだけれど
ふつうの人々には 身近な
魔物のほうが 恐ろしいかもね。
メルビン「もたもたしておれんな。
ここだって いつ魔王に
ねらわれるか わからんでござる。
*「オレは ダーマを めざしてる。
*「魔王のいる 時代だものな。
生きのびるためには しっかり
自分を きたえなきゃな。
*「お日さまと 月の見える世界に
もどってきたっていうのに
ちっとも 安心できやしない。
*「水を くんでるときだって
井戸の底に 魔物がいないか
つい たしかめちまうしね。
*「ショックだわ。
食事の前の お祈りだって
かかしたことがないのよ。
*「なのに あろうことか
神が魔王だったなんて……。
もう立ちなおれない。
*「お客さんのいるときが
いちばん安心できます。
*「仕事が いそがしければ
いそがしいほど 魔王のことを
忘れられますんでね。
*「魔王なんか クソくらえだ。
オレは すべてを忘れて
酒に おぼれるぜ ヒック。
*「夜が こわいんです。
夜は闇を うみだすから。
*「闇は私に ひかる魔物の目を
思い出させるんです。
*「魔王に 神に精霊か……。
すごいことに なってきたのう。
*「こりゃ わしの人生でも
もっとも おおきな事件に
なりそうじゃわい。
マリベル「もう こんな村に来る
理由なんか ないでしょ。
マリベル「ハラをくくって はやく
魔王を 倒しにいきなさいよ。
それとも おじけづいたの?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
マリベル「じょうだん 言ってないで |
いいえ |
マリベル「強がり言わないで |
ガボ「ラグレイ どうしてっかな。
まだ ニコラの家で 働きもせず
ダラダラしてんのかなあ。
メルビン「時間がないでござる。
アルスどの はやく魔王を!
*「魔王が来たって だいじょうぶ。
このメザレには 伝説の英雄
ラグレイが いるんです。
*「たとえ世界が ほろびても
メザレだけは ほろびません!
ガボ「ラグレイが メザレの英雄なら
ラグレイより はるかに強い
アルスは 世界の英雄だな。
アイラ「魔王が あらわれたのに
こんなふうに おちついた村も
ちょっと めずらしいわね。
アイラ「ちょうど ニセの英雄が
村人の 心のよりどころに
なってるからかしら。
メルビン「村の者は みな
たいそう ニセの英雄に期待を
かけているようで ござるな。
*「今にして思えば あの神は
うさんくさいことばかり
言っていたよなあ。
*「各国から 人を集めて
武器を捨てろとか 魔物を
殺すなとか 言ってたしよ。
*「今まで しあわせだったのに
いきなり 不幸の どん底に
たたき落とされた気分だわ。
*「よみがえったのは 神ではなく
じつは魔王だったなんて……。
もう この世の終わりですわ。
*「いままで 魔王が神さまに
なりすましていたなんて
ちっとも 気づかなったよ。
*「人間を だますのなんて
きっと 魔王にとっちゃ
かんたんなんだろうね。
*「精霊さまが 魔王の正体を
あばいてくれたんだって。
*「ついでに 精霊さまが魔王を
やっつけてくれれば いいのにね。
*「さいきん 英雄どのの お顔が
すぐれないんじゃよ。
*「なにか 心配ごとでも
あるんじゃろうか。
*「ううっ……わしは大バカじゃ。
*「この世から 大陸が いくつか
消え去ったときでさえ あやつを
神だと 信じておったんじゃよ。
*「あっはっは。
心配なんか いらないよ。
*「いざとなったら 魔王なんて
ラグレイが 指先ひとつで
やっつけてくれるさ。
*「妻は 安心しきってるけど
ホントに だいじょうぶかな?
*「いかに ラグレイが英雄でも
たった ひとりで 魔王に
立ち向かえるものだろうか。
*「きしゃー!
*「どんなとこだって いい。
魔王の きょういから
のがれられる場所へ行きてえよ。
*「だれでも いいわ。
ラグレイに たのんできて!
*「のんびりしてないで
はやく 魔王を倒してって。
*「ご先祖さまの 空とぶ神殿が
あったら みんなで雲のうえに
にげられると思うの。
*「お空に にげちゃえば 魔王だって
ぜったい 手出しできないわよ。
あたしって かしこいでしょ。
*「魔王が せめてこないのは
きっと 精霊の出方を
うかがっとるからじゃよ。
*「じゃが それも 長続きは
せんじゃろうな……。
*「いつ魔王が 大軍をひきいて
せめてくるかと思うと
こわくて 気が休まらねえよ。
ニコラ「アルスさん 知ってますか?
ボクたちが 面会した神は
なんと 魔王だったんですよ。
ニコラ「どうりで 神にバケた魔王が
ラグレイどのの 姿を見たとき
ぎこちなかったわけだ。
ニコラ「魔王は ラグレイどのに
正体を みやぶられないように
必死だったんでしょうね。
マリベル「バッカじゃないの。
魔王が ラグレイなんかを
おそれるわけないじゃない。
マリベル「ニコラは 詩人よりも
笑わせ師のほうが 向いてるわね。
ニコラ「ラグレイどのには
先祖代々につたわる 宝剣と
よろいを さずけました。
ニコラ「あとは ラグレイどのの
決心さえつけば いつでも
魔王退治に出られるでしょう。
*「ラグレイさんには ここで
飲み食いしたぶんくらいの
はたらきは してほしいものね。
アイラ「見てくれは 良くても
ユバールじゃ なさけない男は
女に相手にされないのよ。
マリベル「ここのメイドも
気苦労が たえないわね。
マリベル「バカを ふたりも
やしないながら 毎日
がんばってるんだからさ。
ラグレイ「アルスさん!
アルスさんなんですね。
ああッ 会いたかったよぅ。
ラグレイ「私のほうは いよいよ
やばくなってきました。
もう 時間がないんです。
ラグレイ「村人の頼みで 私は
魔王を 退治するための旅に
出なくてはなりません。
ラグレイ「でも その前に だれかが
魔王を倒してくれたなら 私が
旅立つ必要は なくなります。
ラグレイ「一生の お願いです。
どうか できるだけ はやく
魔王を退治してきてください。
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
ラグレイ「ううっ ありがとう。 ラグレイ「たしかに 約束しましたよ。 ラグレイ「私が 魔王と戦うだなんて |
いいえ |
ラグレイ「そんなことを言わずに |
ガボ「みっともないなあ。
ラグレイは 村の英雄なんだから
もっと 堂々としてほしいぞ。
アイラ「いつまで ニセの英雄が
村人の 希望でいられるか
わかったもんじゃないわ。
アイラ「みんなが 希望を失う前に
いそいで 魔王を倒さなくては。
マリベル「あんたは 人がいいから
ラグレイが 村を追い出される前に
魔王を 倒そうとしてるんでしょ。
マリベル「アルスのことなら
なんでも お見通しなんだからね。
メルビン「ちょっとばかり
かわいそうでござるな。
メルビン「なんとか ラグレイどのが
魔王退治に 行かされる前に
魔王を 倒してやるでござるか。
ラグレイ「だいたい 私なんかが
魔王と戦ったら あっというまに
ザキで 息の根を とめられますよ。
ラグレイ「だけど 考えてみれば
いちどは その魔王のいる城に
行ってきたんですよね。
ラグレイ「よく あの場で
殺されなかったよなぁ。
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