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マリベル「まさか あの橋の先に
グリンフレークが あるなんて
思いもしなかったわね。
ガボ「ウガァ どっちだ。
呪いの雨が 降る前なのかな。
それとも 降った後なのかな?
*「グリンフレークへ ようこそ。
お前さんも ハーブの買い付けで
ここへ来なさったのかい?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
*「やっぱり そうかい。 |
いいえ |
*「おや ちがうのかい。 |
*「ハーブ園で あそんでたらね
持ち主の カサドールさんに
おこられちゃったんだぁ。
*「庭師の ポルタおじさんは
おこったりしないのにぃ。
*「短い間じゃが あのハーブ園で
ブドウを作っていた時期が
あってのう……。
*「当時の主人が 反対を押しきって
始めたことなんじゃが すぐに
失敗してしまったんじゃ。
*「この町に 住んでる人たちは
灰色の雨の伝説を信じてるけど
私としては どうもね。
*「だいたい 人が石になるなんて
そんなバカげた話が 現実に
おこりえるわけがないよ。
アルスは 本だなを調べた。
アルスは
「怪力 マチョー」という本を
手にとって読んだ。
ランキングを上げるために
腕力をきたえる マチョーという女性の
涙あり 笑いありのエッセイだ。
あとがきに こう記されてあった。
”1位になったら 私をふった あの人を
思いっきり 抱きしめてやるわっ!
背骨がくだけるほど 強くね……。
*「ホントさ この井戸の底には
女の死体が うまってるって
ウワサなんだぜ。
*「だから ベイベー。
こわくなったら いつでもオレに
抱きついてきな。
*「……ぶるぶる。
アルスは 立て札を読んだ。
ハーブを買いたい方は
園内の庭師に お申し付けください。
*「家族を捨てて 出ていったけど
それまでリンダは 本当に
よく がんばったと思うよ。
*「だってさ イワンときたら
屋敷を失ってからは てんで
働こうとしなかったんだぜ。
*「そういや イワンが酒場に
顔を見せなくなってから
だいぶ たつよなあ。
*「妻のリンダを ここで働かせて
イワンは すみっこの方で
よく酒を あおってたよ。
*「屋敷を失ったころのイワンは
手の つけようがないほど
あれてましたからねえ。
*「その とばっちりを いちばん
受けたのが 妻のリンダでね。
よく怒鳴られてましたよ。
*「オレと結婚したことを
こうかいしてるんだろ とか
まだペペを好きなんだろ とか。
*「あんなに 苦しめたんだから
リンダに出ていかれるのも
ムリありませんよ。
マリベル「かしこい あたしの予想は
ズバリ 的中していたってわけね。
マリベル「あのふたりの結婚が
うまくいってたら この世から
失敗という言葉がなくなるわ。
*「屋敷が人手に わたっちまうとは
死んだ ボルックさんも
うかばれねえぜ。
*「そうなっちまったのも
みんな イワンのせいなんだ。
*「ブドウ園なんか おっぱじめて
失敗した イワンのな。
*「カヤ奥様は おやさしい人じゃ。
*「やまいにふせる だんな様が
元気になるようにと みずから
食事を作っとるそうじゃよ。
*「おさななじみの 私には分かる。
リンダが 町を出ていったのは
ペペを探しにいくためだわ。
*「どんなに時が ながれても
きっと 愛したペペのことを
忘れられなかったのよ。
*「リンダが 夫のイワンと息子を
おきざりにして 町を出てから
もう だいぶたつのう。
*「いまごろ リンダは どこで
どうしてるんじゃろうか……。
マリベル「ウッソでしょー!
あのリンダが 息子をおいて
家出するなんて 信じらんない。
*「屋敷の いまの主人である
カサドールどのは 長いあいだ
身体を わずらってるそうな。
*「けんしん的な奥方の
看病の かいもなく ご主人は
今もベッドで 寝たきりだとか。
*「カヤ奥様も おひとよしだぜ。
何でも イワンが ふみたおした
酒代まで 払ってるそうなんだ。
*「いくら カヤ奥様にとって
イワンが 昔の主人だからって
そこまでする必要 ないのによ。
*「ある朝 教会に来たら
目に涙をためた女が ここに
すわっておったんじゃ。
*「女は 涙をこらえながら
長いこと 祈っておったわい。
*「そして その翌日 女は……
リンダは 姿を消したんじゃよ。
ポルタ「あ あなた方は まさか!
いやいや そんなバカなことが
あってたまるか……。
ポルタ「どうも すみません。
とつぜん 取り乱したりして。
ポルタ「私の兄を 助けてくれた方に
みなさんが そっくりなので
おどろいたんですよ。
ポルタ「まあ みなさんにとっては
どうでもいいことですよね。
それは ともかくとして……。
ポルタ「ハーブ園へ ようこそ。
ゆっくり ごらんください。
ガボ「若いときのポルタを オイラは
ちゃんと 覚えてるもんね。
ガボ「たしか アニキ思いの
いいヤツだったぞ。
マリベル「ペペの弟のポルタは
あたしたちのことを なんとか
おぼえていたようね。
マリベル「ま それも当然よね。
あたしの美しさは いちど会ったら
忘れられないはずだしぃ。
ポルタ「なんて ぐうぜんだろう。
あの日の あの方たちに
そっくりな人に出会うなんて。
ポルタ「でも あの方たちだって
いまの私たちと 同じように
年をとっているはずだ。
ポルタ「今日も 広い世界のどこかを
旅しているんだろうな。
チェリ「やめてよ コパン。
あとで あそんであげるから
言うことを ききなさいったら。
チェリ「でないと あんたのエサを
もってこれないでしょ!
コパン「あおーん!
イワン「つかれた つかれた。
帰って やすみたいけれど
そうもいかんしなぁ。
イワン「エペが みはってるうちは
サボれそうにないか……。
エペ「オレが みはってないと
父さんは すぐに なまけて
仕事を ほうりだすんだ。
エペ「リンダ母さんは とっても
はたらき者だったのに なんで
父さんは こんななんだ。
*「お父さんには ペペっていう
お兄さんがいるの。
*「ペペおじさんは 町から東にある
大きなハーブ園のある屋敷に
住んでいるらしいの。
*「あんまり遠いんで まだ
いち度も あそびに行ったことが
ないんだけどね。
アルスは 本だなを調べた。
ハーブに関する本が
ぎっしり ならんでいる。
机のうえに 手紙がある。
読みますか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
アルスは手紙を読んだ。 ”ウワサで イワンのブドウ園が ”直接 チカラにはなれませんが ”あと 父さんがなくなったそうですね。 この先は 手紙が やぶかれていて |
いいえ |
(何も起こらない) |
*「オラが ガキンチョだったころ
灰色の雨ってのが降ってきて
みんな 石になっちまっただよ。
*「だけんど あれ以来いちども
灰色の雨は 降ってこねえんだ。
めでたし めでたしだべ。
エペ「まてよ 父さん!
エペ「このあと 草むしりだって
残ってるんだぞ。
エペ「つらいからって やめたら
仕事をくれたポルタさんに
もうしわけないだろ。
イワン「やめたりしないさ。
ただ 今日は もう終わりだ。
続きは あしたにするよ。
エペ「なにが あしただよ!
今日の仕事だって ぜんぜん
終わってないじゃないか!
エペ「そんなふうに だらしないから
母さんは 愛想をつかして
出ていったんだぞ。
イワン「わかったから 怒鳴るなよ。
明日からは まじめに はたらく。
けど 今日は もう終わりだ。
マリベル「ねえねえ アルス。
だいぶ フケこんでたけど
さっきのって イワンよね?
マリベル「っていうことは たぶん
ハーブ園に 戻っていったのは
イワンとリンダの 息子じゃないの!
エペ「新しい仕事についても
こまったことに 父さんは
ぜんぜん 長続きしないんだ。
エペ「リンダ母さんは とっても
はたらき者だったのに なんで
父さんは ナマケ者なんだ。
マリベル「エペって 母親ゆずりね。
かすかに リンダの面影があるわ。
マリベル「リンダに 似てるのは
外見だけで なかみは イワンに
そっくりだったら 最低だけど。
イワン「はて? どこかで いちど
お会いしましたっけ。
イワン「子どもの知り合いなど
いないが みなさんの顔には
どうも見覚えがあるような……。
イワン「うーむ やっぱり
私の気のせいでしょうか。
マリベル「なんか むかつくわね。
なんで おぼえてないのかしら?
マリベル「アルスは ともかく
あたしみたいな 超絶美人を
忘れるなんて 失礼しちゃうわ。
ガボ「イワン デブったよな。
腹のあたりなんか ぜい肉で
たぷたぷしてたもんなあ。
アルスは 本だなを調べた。
アルスは
「バロック 全仕事」という本を
手にとって読んだ。
おどろおどろしい 建物のイラストが
ページを うめつくしている……。
*「え〜 それはマズイっしょ。
そんなことをしたら 私が
カヤ奥様に しかられるわ。
チェリ「でも この料理を
食べずに 捨てるなんて
もったいなさすぎるよ。
*「キモチは分かるけど それは
味つけに失敗したから 奥様に
捨てるように言われてるのよ。
チェリ「どうせ 捨てちゃうなら
犬にやったっていいでしょ。
チェリ「コパンだって 毎日毎日
残飯や 残りものばっかじゃ
かわいそうだよ。
チェリ「たまには ちゃんとした
だれも手をつけていない料理を
食べさせてあげたいの!
*「う〜ん よし! わかった。
とくべつに みのがしてやろう。
チェリ「やったぁ ありがと!
それじゃあ さっそく 料理を
コパンに もってくね。
マリベル「メイドだった カヤが
今や 奥様と呼ばれる身の上か。
たいした たまのこしだわ。
ガボ「チェリっていったっけ?
オイラ あの姉ちゃん 好きだ。
動物に やさしいもんな。
*「あーあ 奥様が 味つけに
失敗した料理は ぜったいに
捨てなきゃならないのにな。
*「料理を 捨てなかったことが
カヤ奥様に知れたら 大目玉だわ。
それにしても……。
*「カヤ奥様は いったい
どこに出かけたのかしら。
カサドール「寝たままで すみません。
病気のせいで ベッドから
起き上がれないのです。
カサドール「しかし こんな身体でも
楽しみだけはあります。
カサドール「カヤの作ってくれる
三度三度の食事が 今のわしの
生きがいなんです ごほっごほっ。
チェリ「よろこべ コパン!
今日は すんごい ごちそうよ。
チェリ「メイドの私たちだって
食べることのできない
カヤ奥様の お料理だよ。
コパン「……くーん。
チェリ「あら 気のない返事ね。
もっと よろこびなさいよ。
お前のために苦労したんだぞ。
ガボ「あのワン公 あんまり
うれしそうじゃないな。
メシが マズイからかな?
イワン「オレは今の生活に
じゅうぶん 満足している。
だから もう よしてくれ。
カヤ「これは あなたのためだけに
やっていることじゃないわ。
私のためでもあるのよ!
イワン「でもキミは あの屋敷で
裕福な生活を おくってるだろ。
いったい なにが不満なんだ?
カヤ「……。
イワン「オレのことは もういい。
こんなふうに 落ちぶれたのも
自分のせいだと分かっている。
イワン「おや? なんだなんだ。
まだ そんなガラクタを
だいじに持っていたのか。
カヤ「ガラクタとは ひどいわね。
コレ 子供のころ あなたが
おくってくれた物なのよ。
イワン「そうだったのか……それより
小ビンのヒモが ボロボロだな。
とりかえた方がいいぞ。
カヤ「いいのよ このままで。
当時のままに しておきたいの。
マリベル「うっわー 見たくなかった。
イワンとカヤの ただれた関係は
いまだに続いてるようね。
ガボ「なあ ハーブ園に行こうぜ。
オイラは チェリのワン公と
なかよくなりたいんだ。
イワン「美しい思い出をもつ人は
今に 不満があればあるほど
美しかった過去を 夢見ます。
イワン「昔のことなど忘れて カヤが
考えを あらためてくれれば
よいのですが……。
*「とうとう カヤ奥様に
ウソをついてしまったわ。
でも しょうがないか。
*「チェリが 奥様の料理を
犬っころに やったなんて
クチがさけても言えないしね。
カヤ「うーん おかしいわねぇ。
失敗した料理は もう捨てたって
メイドは言っていたけど……。
カヤ「ゴミ箱が カラッポじゃない。
どこに捨てたのかしら?
チェリ「はやくおいでよ コパン。
どうしたの? 元気ないね。
チェリ「さては オナカがいっぱいで
そろそろ お昼寝したいとか。
チェリ「コパン!
チェリ「だれか だれか来てー!
どうすればいいの……
コパンが死んじゃうよぉ!
ガボ「たいへんだ アルス。
ワン公が ぶったおれたぞ!
はやく 助けてあげないと。
話しかけても 反応はない。
エペ「おい あんた。
いつまでも しがみついてないで
犬から はなれてくれよ。
エペ「でないと そいつの手当てが
できないじゃないかっ!
チェリ「うう……コパン。
死んじゃイヤだよぅ。
チェリ「コパン! コパン!
お願い だれでもいいから
コパンを助けてよぅ。
ポルタ「犬の手当をするなら
いったん わたしの家に
運んでからにすべきだ。
ポルタ「ここで手当てをするよりは
その方がいいですよね?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
ポルタ「うむ そうと決まれば ポルタ「さあ みなさんも |
いいえ |
ポルタ「では みなさんは ここで ポルタ「たしかに 急いだほうが |
ポルタ「……毒消し草を
あたえたが ちゃんと犬にも
きいてくれるだろうか。
チェリ「毒だなんて そんな……。
いったい だれが どうやって?
そんなの考えられないわ!
ポルタ「よく考えてみなさい。
けさまで 元気だった犬が
アワまでふいて倒れたんだぞ。
ポルタ「それも いきなりだ。
毒を盛られたとしか 考えられん。
なにか思い当たることは ないかね?
チェリ「そんなこと言われたって
私には なにがなんだか
わかりません……。
アルスが話しかけると 犬は
目だけを こちらに向けてくる。
*「ワンちゃん がんばってね。
今は苦しくても お父さんが
きっと なおしてくれるから。
エペ「毒を盛られたっていう
ポルタさんの意見に
オレも さんせいだな。
エペ「だけど 毒のエサをやるほど
犬を にくんでる人間なんて
この町にいるのかなぁ?
ポルタ「なにか くさったモノを
食べたとしても ここまで
ひどい状態にはならんぞ。
チェリ「くさったモノですって?
コパンが食べたのは 奥様が
だんな様のために作った料理よ。
チェリ「味つけに失敗したから
捨てろって 言われていたけど
それに毒が入ってるとは……。
ポルタ「料理に 毒が入っていたとは
言いきれんが 犬が倒れるまえに
食ったのは奥様の料理なのだろう?
チェリ「奥様が 料理に毒を?
まさか そんなの信じられない!
あれを食べるのは だんな様よ。
チェリ「でも……はっ そうか!
そうだったんだわ。わかった。
だから だんな様は……。
チェリ「思い当たることがあるので
いったん 屋敷へもどります。
コパンのこと お願いします。
マリベル「毒が入っていようが
入っていまいが あのメイドが
ドジだったのが すべての原因よ。
マリベル「もちろん アルスも
あたしの意見に さんせいよね?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
マリベル「ふふ いい心がけよ。 |
いいえ |
マリベル「なによなによ バカ! マリベル「見た目が ちょーっと |
ガボ「ガルル ゆるせねえぞ!
動物を いじめるヤツは
誰であろうと オラのテキだ。
ポルタ「いちじは ダメかと思いましたが
なんとか 持ち直したので
たぶん あの犬は助かるでしょう。
ポルタ「とはいえ さすがに
まだ 気を抜けるような
状態ではありませんがね……。
*「チェリの かわいがってる犬が
たおれたって聞いたべ。
*「まさか とっくに犬っころは
死んじまったんじゃねえべな?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
*「ぬぅおおっ! オラは |
いいえ |
*「ふぅ オラ 安心しただよ。 |
*「う〜ん どうしたのかなぁ。
いつもは チェリとワンワンが
あそんでる時間なのにぃ。
*「ちっ おもしろくねえな。
また奥様が イワンの家に
行くのを見ちまったぜ。
*「いいかげんに カヤ奥様も
イワンの野郎なんか
見捨てちまえばいいのによ。
*「どうしちゃったのかしら?
なぜだか知らないけど チェリが
奥様と にらみあってるのよ。
*「ふたりで なにを話してるのか
気になるけど あたしは
こわくて近づけないわ。
チェリ「奥様の料理を食べた犬が
アワをふいて 倒れたんですよ。
チェリ「もし ご病気の だんな様が
あれを食べていたら いまごろ
大変なことに なっていました。
チェリ「あの料理には どういう
味付けが されているんですか。
カヤ「母親秘伝の 味付けよ。
それより どうして お前は
私の言い付けを やぶったの?
チェリ「すごい お母さんですね。
むすめに 毒の料理を
教えてくれるなんて。
カヤ「な なにを言ってるのよ。
それ以上 いいかげんなことを
言うと ゆるしませんよ!
チェリ「いいかげんなもんですか!
たぶん 奥様の料理のせいで
だんな様は 今も寝たきりなんです。
チェリ「味付けに 失敗したのだって
おおかた いつもより多く 毒を
まぜすぎたからじゃ ないんですか。
カヤ「いいかげんにおし チェリ!
それ以上 何か言うと 屋敷から
出ていってもらいますよ。
カヤ「とにかく 今後 2度と
私の言い付けには そむかないこと。
わかったわね?
チェリ「……はい 奥様。
カヤ「さあ もう話は終わりです。
早く仕事に おもどりなさい。
ガボ「ウガァ! がまんできねえ。
オイラ いますぐ カヤに
かみついてやりたいぞ。
マリベル「毒って聞いたとき
カヤの表情が いっしゅん
こおりついたよね。
カヤ「私が 主人の食事に
毒を まぜているだなんて
とんだ言いがかりだわ。
カヤ「あの おとなしい子が
犬いっぴきで あそこまで
たいどが変わるとは……。
カヤ「チェリには そろそろ
ここを ヤメてもらった方が
いいのかしらね。
マリベル「いっかい ためしに
うちのメイドに クビを
言いわたしてみようかしら。
マリベル「もちろん 本気じゃないけど
メイドが どんな反応をするか
ちょっと きょうみあるわん。
*「あんたたち すごいわ!
よく チェリと奥様のそばに
行くことができたわね。
*「私なんか ふたりの迫力に
負けちゃって ここでブルブル
ふるえていたってのにさ。
チェリ「奥様が だんな様の料理の
味つけに使っていたのは
調味料ではなく 毒なんだわ。
チェリ「だんな様の病気が
治らないのは 奥様が食事に
毒を まぜていたからよ。
チェリ「証拠さえ 見つかれば
奥様の悪事を あばくことが
できるはずなのに……。
チェリ「奥様は 私を けいかいして
ぜったいに スキを見せない。
私じゃ 証拠さがしはムリだわ。
ガボ「聞かれるまでもなく オイラは
チェリに チカラをかすぞ。
ガボ「オイラは いつだって
動物に やさしくする者の
味方だからな。
マリベル「こまってる老人や
かよわい子供を 助けるのなら
あたしも さんせいなんだけどぉ。
マリベル「アルスが すすんで
女の人の チカラになろうとすると
なーんか イライラすんのよね。
カヤ「キャッ!
カヤ「……いたたたた もう!
ホントに今日は とことん
ついていない日ね。
カヤ「たいした用も ないくせに
ひとの屋敷の前を うろちょろ
しないでちょうだい。
カヤ「まったく もう!
ホラ わかったら さっさと
道を あけてくださいな。
マリベル「あー もうッ!
マリベル「勝手に ぶつかってきた
カヤが悪いってのに どうして
あんたは だまってんのよ!
*「私も サボろうかな。
チェリは ふてくされて
はたらこうとしないし……。
*「奥様も 食事のしたくを
すっぽかして どこかへ
いっちゃったしさぁ。
カヤ「ごめんなさいね。
私たちは今 とても
だいじな話をしているの。
カヤ「だから 悪いけど 今すぐ
出ていってくださらない。
アルスは 足元を調べた。
紫色の粉が たくさん つまった
ちいさなビンが 地面に落ちている。
なんと アルスは
ムラサキの小ビンを ひろった!
ガボ「どうしたんだ アルス。
そんなガラクタなんか ひろって
何をしようってんだ?
チェリ「コパンが死にかけたのは
絶対に 奥様の料理のせいです。
けど 証拠がない……。
チェリ「お願いです みなさん。
もし 証拠になる物をみつけたら
ぜひ私に 見せてください。
アルスは むらさきの小ビンを
チェリに 見せた。
チェリ「こ これは カヤ奥様が
肌身はなさず 持ち歩いている
小ビンではありませんか!
チェリ「もしかしたら これが
奥様の悪事を あばく
決め手になるかもしれない……。
チェリ「おねがいします。
その小ビンを 奥様の小ビンを
私に かしてください!
いいえを選んだ場合 | |
---|---|
いいえを選んだ場合 |
チェリ「そうですか……。 |
いいえの場合
ガボ「うーん 証拠かぁ。
そんなもの オイラたち
持ってたかなあ?
チェリ「奥様の悪事を あばくには
どうしても その小ビンが
必要なんです。
チェリ「小ビンを かしてください。
用がすめば かならず 私が
奥様に お返ししますから。
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
アルスは ムラサキの小ビンを チェリ「ありがとうございます。 |
いいえ |
チェリ「そうですか……。 |
*「いけません! だんな様。
走ると お身体に さわります。
カサドール「料理は出来たてが
いちばん うまいのだ。
はよう食いたい…ごほごほっ。
*「そんなに 急がなくても
奥様のつくった料理は
逃げたりしませんよ。
マリベル「そろそろ 食事どきね。
いつも うえてるガボじゃないけど
あたしも オナカすいてきたな。
ガボ「いつも うえているって
それは ホメてんのかい?
マリベル「そんけいしてんのよ。
底無しの井戸みたいな
ガボの いぶくろをね。
ガボ「……くんくん。
そろそろ メシどきだな。
*「料理の さいごの味つけは
自分でするからって 奥様に
台所から 追い出されちゃった。
カサドール「テーブルに 食器が
ならべられていくのを見るのは
いくつになっても 楽しいわい。
カサドール「さて きょうの昼食に
カヤは いったい どんな料理を
出してくれるのだろうか。
カヤ「ヒモが切れてしまった……。
今日にかぎって だいじなアレを
落とすなんて ついてないわね。
カヤ「けど まあ アレの中身は
手元に いくらでもあるし
問題はないか……。
カヤ「お料理のジャマだから
出ていってくださいな。
カヤ「これから もっとも
だいじな 最後の味付けを
するところなんですからね。
イワン「すみませんが しばらく
ひとりにしてもらえませんか。
イワン「いま 息子に 大事な手紙を
書いているところなんです。
コパン「くーん。
エペ「ハラの中のものを 何度か
はいたけど どうにか ワン公は
もちなおしたみたいだぜ。
*「毒消し草が きいたってことは
やっぱりワンちゃんは 毒に
おかされていたのかしら。
ポルタ「いったい どこの だれが
こんな ぶっそうなものを……。
チェリ「くわしいことは あとで
お話ししますから ビンの中身が
なんなのかを 教えてください。
ポルタ「……これは毒だよ。
ながいあいだ 飲み続けると
クセになるという種類のな。
ポルタ「この毒に おかされると
しだいに 身体は やせおとろえ
やがて 死にいたるだろう。
チェリ「やっぱり!
だんな様の病気は この毒が
原因だったんだわ……。
チェリ「ありがとう ポルタさん。
事情は あとで説明します。
ポルタ「やれやれ いそがしい娘だ。
あの犬が 助かったことに
おおよろこびしたと思えば……。
ポルタ「こんどは 毒の入ったビンを
私に見せて 中身は なんだと
といつめてくるんです。
チェリ「私 決心しました。
いまから 奥様と戦います。
チェリ「ですが ご心配なく。
あのビンのことで みなさんに
迷惑は おかけしませんから。
カヤ「あらあら これから
食事を始めるってときに
いったい なんの用ですの。
カヤ「あなたたちが いたんじゃ
料理が まずくなりますわ。
はやく出ていってくださいな。
カサドール「これは ちょうどいい。
カサドール「食事のときは いつも
妻と ふたりきりなので 少々
にぎやかさに 欠けていたのだ。
カサドール「今日は 気分もいい。
たまには おおぜいで 食卓を
かこむのも いいだろう。
カサドール「どうでしょう?
みなさんも わしと いっしょに
食事を楽しみませんか?
いいえを選んだ場合 | |
---|---|
いいえを選んだ場合 |
カサドール「なんと! せっかく カサドール「妻のつくった料理は |
カサドール「ふむふむ そうか。
やはり わしらと いっしょに
食事をしたいというのだね?
はい | |
---|---|
はい |
カサドール「では どこでも カヤ「私は イヤですわ! カサドール「よいではないか。 カサドール「うむ それでは チェリ「お待ちください! チェリ「だんな様の お料理にだけ カサドール「なんだと! チェリ「カヤ奥様ですわ。 カヤ「おだまりなさい! チェリ「いいえ 奥様。 カサドール「むむ! その小ビンは チェリ「薬ではなく 毒です。 チェリ「だんな様の ご病気が カサドール「本当なのか カヤ! カサドール「そのうえ さらに カヤ「ご ごかいですわ。 カヤ「ですが なぜ その中身が カサドール「なら お前が *「もう いいだろ カヤ。 カサドール「なんの用だ イワン。 カヤ「そうよ 出ていきなさいよ。 イワン「いいや あるね。 カヤ「なにを言い出すのよ! カサドール「……もう たくさんだ。 カサドール「この町から 出ていけ。 カヤ「もう 気がすんだでしょ。 イワン「さあ 行こうか。 カヤ「でも まだ荷物のせいりが……。 イワン「みんな 置いていくんだ。 |
ガボ「オイラ カヤもイワンも
あんまし 好きくなかったよ。
どっちかって言うと キライかな。
マリベル「ダメダメ親父の イワンも
さいごのさいごで ちょっとだけ
男らしいところを みせたよね。
マリベル「もしもだよ。
もしも イワンが親だったら
あたしは グレちゃうかもね。
ガボ「あれれのれ〜。
オイラは とっくに マリベルが
グレてるものだと思ってたぞ。
マリベル「うっさいわね。
ガボが あたしに意見するなんて
百万年はやいのよ!
*「恐がってばかりいないで
私も 勇気をだして
ここにいれば よかったわ。
*「そうすれば 奥様とチェリが
はげしく 言い合うのを
じかに見られたのになあ。
カサドール「長年 つれそった妻に
こんな形で うらぎられるとは
ゆめにも思わんかったわい。
カサドール「過去の愛情のすべては
わしを あざむくための
ただの演技だったというのか……。
*「グリンフレークのハーブ園も
すばらしいが 東の方にある
ハーブ園の広さには かなうまい。
*「ハーブに きょうみがあるなら
ぜひ 東の方のハーブ園にも
行ってみると いいですよ。
*「イワンが あやまちを
おかそうとしたカヤを
とめたそうじゃな。
*「悪人になろうとするカヤを
はたで見ていて イワンも
さぞ つらかったのじゃろうて。
*「信じたくねえけど オレは
カヤ奥様と イワンの野郎が
町を出てくのを見ちまったんだ。
*「たぶん もう2度と この町には
もどってこないんだろうな。
*「カヤ奥様と イワンの仲が
ふつうじゃないってことぐらい
オレだって 知ってたさ。
*「だけど 結婚までしたのに
カヤ奥様が イワンのことを
忘れずに想っていたとはな……。
*「そういえば 奥様がイワンに
近付きはじめたのは リンダが
いなくなってからかのう。
*「それまでは とおくから
イワンを見守ってるような
ひかえめな感じじゃったよ。
*「もう ウワサになっとるんじゃが
カヤ奥様とイワンが そろって
町を出ていったそうじゃな。
*「やっぱり これは
かけおちってやつかのう。
エペ「しょうがねえ おやじだな。
まったく……あのとき 母さんと
家を 出て行くべきだったぜ。
エペ「そうすれば こんなイヤな
思いは せずにすんだのに……。
リンダ「ごほっごほっ ごめんね……。
エペ「いいんだよ かあさん。
ムリしないで寝てなよ。
ごはんは ボクがつくるから。
エペ「ねえ かあさん。
どこか遠くへ行こうよ。
ふたりだけで……。
リンダ「お父さんは?
エペ「とうさんは どうでもいいよ。
ひとりぼっちになって ここで
さびしがってればいいんだ。
リンダ「それじゃ お父さんが
かわいそうでしょう。
エペ「いいよ あんなヤツ。
どうなったって知るもんか!
エペ「あっ すみません。
少し ぼうっとしてました。
ははは じつはですね……。
エペ「オヤジが 置き手紙をのこして
出ていったみたいなんですよ。
マリベル「ちょっと アルス。
自分から 話しかけておいて
なに ぼーっとしてんのよ。
机のうえに 手紙が置いてある。
読みますか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
”友人が 父さんのために ”今から それを止めにいくが ”どうか わがままを許してほしい。 ”母さんを リンダを不幸にしたことは ”最後になるが いつまでも元気でな。
|
いいえ |
(何も起こらない) |
エペ「おやじが 出て行っても
オレは この町で ポルタさんと
ハーブを作り続けていくだけだ。
エペ「しかし 意外だったよ。
母さんを不幸にした おやじにも
大切な人が いたってことがさ。
エペ「今の おやじは もう昔の
おやじとは ちがうんだな。
まあ……お幸せにってとこかな。
マリベル「アルスや あたしのパパは
家族を捨てて 家を出ていく
なんてことは 絶対にしないよね。
*「なんて おそろしい話だ。
ハーブ園の奥方が だんなを
毒殺しようとしていたなんて。
*「世話好きという 仮面のウラに
あの奥方は おそるべき本性を
かくし持っていたのだな。
*「いつか じょうだん半分に
屋敷をイワンに返してやりたいと
カヤが 言っておったんじゃ。
*「カヤは 屋敷を自分のモノに
するために だんなを
殺そうとしたのかもしれんのう。
*「元気になってよかったぁ
コパンが 病気だったなんて
私 ぜんぜん知らなかったもん。
ポルタ「リンダが ペペ兄さんを
あきらめられなかったように
カヤも同じく……。
ポルタ「イワンを あきらめることが
できなかったんでしょうな。
ポルタ「だからといって
カヤの やろうとしたことは
許されることではありませんがね。
コパン「くーん くーん。
チェリ「おまえが元気になって
ホントに よかったわ。
チェリ「もし お前が死んだら
私は ひとりぼっちに
なっちゃうものね……。
チェリ「そんなこと言ったって
犬の お前には通じないか。
あはは ヘンなの。
*「こらぁ! チェリッ。
いつまでもサボッてないて
ちったぁ 仕事しろッ!
*「おじいちゃんの墓まいりに
いちども来ない ペペおじさんを
お父さんは うらんでるのよ。
*「でも うらんでるぐらいなら
ペペおじさんに 会いにいって
ここへ 連れてくればいいのにね。
*「あんたのためを思って
やさしい私が たんまり仕事を
残しておいてやったのよ。
*「さあ チェリ。
ありがたく はたらきな。
チェリ「見てるくらいなら
すこしは手伝ってくれても
いいんじゃないの。
*「ふん やなこった。
今まで サボりまくったぶん
しっかり働いてもらうわよ。
チェリ「あんたって 悪魔みたいに
性格のわるい人だったのね。
*「あーら 今ごろ気付いたの?
あんたって ホントに にぶいわね。
*「まちなさい リンダ!
外には おそろしい魔物が
いっぱい いるんだぞ!
リンダ「あっ! ビッキー。
だいじょうぶ? 痛くない?
男「はぁはぁ…ああ なんてことだ。
だいじょうぶですか お客さん。
おケガはありませんか?
男「これ リンダ!
おまえも お客さまに
あやまりなさい。
リンダ「だってぇ〜。
リンダ 悪くないよぉー。
悪いのはビッキーだもん。
男「いいから あやまりなさい!
リンダ「ぶぅ〜。
リンダ「ごめんなさぁい。
男「すみません みなさん。
子供のやったことですので
どうか 許してやってください。
男「……ところで あなたがた
私の顔に 見覚えありませんか?
男「いやいや おかしなことを
聞いたりして すみません。
やはり 人ちがいですか。
男「……じつは 30年ほど前に
みなさんに よく似た人たちに
お世話になったものですから。
男「まあ それはともかく
当ハーブ園へ ようこそ。
では ごゆっくりどうぞ。
リンダ「まってよ お父さーん。
ガボ「オイラも スライムを
飼ってみたいなぁ。
マリベル「ねえねえ アルス。
さっき 会ったのって
もしかして あのペペかな?
アルスは 立て札を 読んだ。
ハーブ園 メモリアリーフ。
*「今でこそ ペペさんも
このような 立派なハーブ園の
おやかた様になったが……。
*「若いころは どこかの町で
庭師をやっていたそうな。
*「おやかた様は ここのハーブの
栽培方法を ほかの同業者に
ただで 教えちまっただよ。
*「ここのハーブで 作る薬草は
よくケガにきくって 評判だから
おおぜいの人が 教わりにきただ。
*「じつはリンダは おやかた様の
本当の娘ではないのよ。
*「両親が死んで どこにも
いくあてのないリンダを
おやかた様が 養女にしたの。
マリベル「感動しちゃダメよ。
この手の 人情話には
かならず ウラがあるものよ。
マリベル「おおかた ペペは
リンダって名前に ビビッときて
あの子を 養子にしたんだわ。
*「ここは メモリアリーフ。
おやかた様が いちだいで
きずきあげたハーブ園です。
ペペ「おや あなたがたは!
先ほどは 娘が失礼なことをして
もうしわけありませんでした。
ペペ「ところで みなさん
見てください このハーブ園を。
ペペ「自分のハーブ園をもつのが
子供のころからの 夢でした。
私は夢を かなえたんです。
ペペ「ただ ひとつ 心残りが
あるとすれば この年になっても
独身だってことですかね。
マリベル「まちがいなく ペペね。
マリベル「けど 命の恩人である
あたしたちの顔を 忘れるなんて
恩知らずも いいとこだわ。
リンダ「あのねあのね
あたしの パパの名前は
ペペっていうんだよ。
リンダ「でもねでもね パパは
ホントのパパじゃないんだけど
すっごく やさしいの。
ガボ「なあ アルス。この子に
スライムを ゆずってくれるよう
たのんでおくれよ。
マリベル「まさか 娘にリンダって
名付けて 心の なぐさめに
してるんじゃないでしょうね。
ビッキー「うにゃうにゃ!
みゃみゃみゃ?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
ビッキー「ぴぎー! |
いいえ |
ビッキー「うみゃ〜。 ビッキー「ボクが しゃべれるのは ビッキー「くれぐれも みんなには |
ガボ「かわいいよなぁ。
なんで スライムは いっつも
ぷるるんと してんのかな。
*「ここのハーブで作る薬草が
効果てきめんなんで 昔は よく
ハーブが売れてたんだけどよ……。
*「オヤカタが ハーブの栽培方法を
教えちまってからは 昔ほど
ハーブが売れなくなっちまったんだ。
*「聞くだに トホホな話だろう。
うちのオヤカタって
ホント おひとよしだからよ。
アルスは 本だなを調べた。
アルスは 庭師の作業日誌を
手にとって読んだ。
”今日も あのシスターが やってきた。
いつも おやかた様の方を 見ているので
呼んできましょうかと たずねると……。
”そのシスターは おびえた顔つきで
頭を左右にふって 修道院の方へ
走っていった。
*「ここも ひとむかし前は
行列ができるほどの
活気が あったんだぜ。
*「なんでかっていうと
ここのハーブを 調合して作った
薬草が 大好評だったからさ。
*「当時 ここのハーブで作った
薬草は そこいらの薬草よりも
よくケガに きいたんだ。
*「最近はみないが 半年前まで
よく 修道院のシスターを
ここで見かけたもんじゃよ。
*「わしが 声をかけても
はずかしがって 中には
入ってこんかったがのう。
*「そうねぇ リンダが屋敷に
やってきたのは ひどい
どしゃぶりの夜だったわね。
*「ずぶぬれで 入ってくるなり
大声で泣きだしたのよ。
パパとママが死んじゃったって。
*「さいしょは おやかた様も
リンダを 修道院にでも
あずけるつもりだったらしいよ。
*「だけど リンダが 自分の名を
言ったとたんに おやかた様は
養女にするって言い出したのさ。
*「リンダっていう名前に
なにか 強い思い入れでも
あったんですかねえ。
アルスは 本だなを調べた。
アルスは
「眠れぬ夜のハーブ」という本を
手にとって読んだ。
ラベンダーのハーブを枕元に
置きましょう。
バラやカモミールなどの
ハーブティーも眠りを促進します。
眠れぬあなたに 心地よい眠りを。
*「もし 長旅で お疲れでしたら
屋敷で 休んでいかれては
いかがでしょうか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
*「では みなさん ごゆっくり |
いいえ |
*「あらあら そうですの。 |
*「うちの おやかた様ったら
いつまでたっても 結婚する気が
ないらしくってぇー。
*「お見合い させようと思って
ないしょで 話すすめてたら
直前で バレちゃってさあ。
*「なんか よっぽど
結婚したくない理由でも
あんのかなー?
マリベル「この調子じゃ ペペは
一生 独身を つらぬくつもりね。
マリベル「探せば リンダよりキレイな
女なんて いくらでも いるのに
めめしいったら ないわね。
アルスは 立て札を 読んだ。
この先 ギュイオンヌ修道院
*「この 光るハーブは
シスターベシアが 生前
だいじに育てていたものです。
*「修道院に やってきた彼女の
たった ひとつの持ちものが
このハーブの種だったんです。
花びらが ぼんやりと光っている。
ふしぎなハーブだ。
タンスの中には 日記があった。
日記を 読みますか?
”夫と子どもを 捨ててきた私を
あなたは けいべつするでしょうね。
”だから あなたには会えません。
でも あなたを愛するきもちに
さからうこともできません。
”せめて とおくから あなたを
見守ることだけは お許しください。
”ハーブの咲きほこる あの庭で
あなたの姿を 目で追っていた
あの日のように……。
マリベル「修道院が おぞましい
バロック建築に 汚染されてなくて
心底 よかったって思うわ。
*「ここは ギュイオンヌ修道院。
俗世を捨てて 神につかえる
者たちの つどう場所です。
*「ここでは 野菜などは
できるかぎり 自分たちで
作ることになっているの。
*「日々のかてを 得ることが
できるのも 大地の精霊の
お恵みがあってこそね。
*「お墓に きざまれているのは
修道名ではなく 父と母から
あたえられた 名前ですのよ。
*「なんで 修道院の食事って
味気ないもの ばかりなのかしら。
そのうえ 量もすくないしさ。
*「あーあ シスターベシアの
ハーブを使った料理が 無性に
恋しくなってきちゃった。
ガボ「う〜 みんな 死んだひとの
話ばっかしてて オイラ
気味悪くなってきたぞ。
マリベル「あたしが 死んだら
アルスは あたしのこと
ずっと おぼえててくれる?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
マリベル「ふーん だったら |
いいえ |
マリベル「ふん! じゃあ あんたが |
*「書物は 時がたつにつれて
少しずつ いたんできます。
*「古くなった書物を のちの世に
のこすには こうして あらたに
書き写さねばなりませんの。
*「息を ひきとる前の ベシアに
たのまれて お墓に文字を
ほったのだけれど……。
*「あの言葉は いったい だれに
あてられたものなのかしら?
アルスは 本だなを調べた。
本と本の間に 何かが はさまっている。
修道院の こんだて表だった。
ハーブを使ったメニューが目立つ。
アルスは 本だなをしらべた。
アルスは
「やさしいハーブの育て方」という本を
手にとって読んだ。
初心者用の ハーブの本だ。
持ち主が よく活用しているらしく
かなり ページが いたんでいる。
*「ハーブ園の そばを通るとき
なぜだか知らないけど ベシアは
いつも コソコソしてたわね。
*「とても つらそうな表情で
いっこくもはやく ハーブ園から
はなれたがっていたっけ。
*「修道女の いちにちは
朝の黙想からはじまります。
*「しずかに聖書を読み
心のなかの 神の言葉に
耳を かたむけるのです。
*「シスターベシアというのは
修道名で 彼女の本当の名は
リンダといいます。
*「身体の弱かったリンダは
半年ほど前に やまいに倒れ
帰らぬ人となりました。
*「リンダの死を しらせたくても
彼女の家族が どこにいるのか
だれも知らないのです……。
*「ここに お墓を たててほしい
というのが シスターベシアの
さいごの願いでした。
*「だから 彼女の お墓だけ
このような さみしげな場所に
ポツンと たってるのよ……。
*「あっ! いけない いけない。
私ったら 井戸に水をくみにいく
とちゅうだったんだわ。
*「私たちは 月にいちど
何人かで ふもとにおりて
町に買い出しにいきますの。
*「自分たちのチカラだけでは
必要なものの すべてを
まかないきれませんので。
アルスは 墓石を調べた。
リンダという人の 墓らしい。
墓石には 文字が きざんである。
読んでみますか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
私は ここにいます。 |
いいえ |
(何も起こらない) |
マリベル |
マリベル「うーん リンダねえ。
| ||||||
ガボ |
ガボ「ペペの おっちゃんに ガボ「あっ でも もうリンダは |
マリベル「アルス わかった?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
マリベル「まだ 何も言ってないのに マリベル「修道院にきたリンダは |
いいえ |
マリベル「ホント バカねえ。 マリベル「修道院にきたリンダは |
*「いいながめでしょう?
ここからだと ふもとにある
ハーブ園が よく見えるの。
*「ハーブ園が見下ろせるから
シスターベシアは ここに墓を
たててほしいと 願ったのよ。
*「生前 彼女は こうして
ここに立って ハーブ園を
よく ながめていたわ。
ペペ「おや どうしました。
みょうに 深刻な顔をして
なにか あったんですか?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
アルスは 修道院に ペペ「あなたたち どうして ペペ「いや そんなことは ペペ「リンダの墓か……。 ペペが 仲間にくわわった! |
いいえ |
ペペ「ふむ そうですか。 ペペ「私に できることなら |
ペペ「ダメだ 信じられん。
こんなにも 身近に
リンダがいたなんて。
ペペ「もし そうだったとしても
私が 気づかないわけがない。
ガボ「ペペは ハーブのにおいが
身体に しみついてるんだな。
そばにいると いい香りがするぞ。
マリベル「あたしたちが 誰だか
どんかんなペペも うすうすは
感づいてるみたいね。
出ようとすると
ペペ「私は仕事があるので
ここを はなれるわけには
まいりません。
ペペ「私は ここで待ってます。
どうか 私との約束を
わすれないでください。
ペペ「おお! みなさん
待ちこがれましたよ。
ペペ「さあ はやく私を
リンダの墓がある場所へ
つれていってください。
ペペが 仲間にくわわった!
*「おやかた様が ルスのあいだは
私がリンダを みていますから
安心して お出かけくださいまし。
ペペ「リンダが だだをこねても
ぜったいに ハーブ園の外には
出さないようにしてくれ。
*「ふんふんふーん。
わるいけど 仕事中だから
話しかけないでね。
リンダ「どっか行くの パパ?
リンダも いっしょに行く!
行きたい 行きたい。
ペペ「すぐに帰ってくるから
おまえは ここで ビッキーと
あそんでいなさい。
リンダ「ぶぅ〜。
ペペ「娘が父親に なつくのは
ちょうど 今ぐらいの
年ごろまでなんでしょうな。
ビッキー「にょ〜ん。
ペペ「すまんが アルスさん。
ちょっとだけ あの小屋へ
よっていただけませんか?
ペペ「リンダの墓を見る前に
心のじゅんびを したいので
どうか お願いします。
出ようとすると
仲間をおいて ひとりだけ この場を
はなれるわけにはいかない。
マリベル「あー やだやだ。
ホコリくさいったらないわね。
マリベル「ちょっと アルス!
はやく ここから出ようって
ペペさんに言ってきなさいよ。
ガボ「うーん ペペは今 すっごく
むずかしい顔をしてんな。
あれが 心のじゅんびってやつか。
ガボ「ペペの顔を見てると
オイラまで むずかしい顔に
なっちまうぞ うーん。
ペペ「……思えば 今まで
いろんなことが ありました。
ペペ「話は 私が ふるさとの町を
飛び出したあとのことです。
ペペ「この地に やってきた私は
まず 荒れ地を きりひらいて
小さなハーブ園を作りました。
ペペ「最初はジミに 商売を
やっていたんですが じょじょに
売り上げが のびていって……。
ペペ「ふと気づけば ハーブ園も
ずいぶん大きくなり 人も
たくさん集まっていたんです。
ペペ「ひとり静かに くらしたいという
私の思いとは うらはらにね。
ペペ「……さてと みなさん。
そろそろ出発しましょうか。
ペペ「ここなんですね?
本当に ここにリンダの墓が
あるというのですね……。
*「今 リンダと言いましたね?
もしや あなたがたは
リンダの ご家族の方ですか?
ペペ「家族ではありません。
リンダとは おさななじみです。
*「……もしかして あなたは
ふもとのハーブ園の ペペさん?
ペペ「ええ そうですが。
*「おひきとりください!
今も昔も ここにはリンダという
名前のものなど おりません。
ペペ「どうして 冷たくするんだ。
リンダの墓があると聞いて
せっかく ここまで来たのに。
*「ここには リンダの墓なんて
ありませんわ!
ペペ「あんたが ジャマするなら
自分で リンダの墓をさがす。
あんたの案内など いらん!
*「あっ お待ちなさい!
マリベル「あー つかれた〜。
帰りは 歩きたくないから
アルスが おぶってよね。
ガボ「ペペのヤツ
すげえ いきおいで
墓の方へ 走ってったなあ。
*「つい 意地になって じゃけんに
ふるまってしまったけれど
悪気は なかったんです。
*「ただ 今になって のこのこ
やってきた あの人が
ゆるせなかったんです。
*「せめて もう少し はやく
ここに来てくれたなら……。
*「ベシアの墓に 人がいるわ……。
やっと ベシアの家族のかたに
れんらくが とれたのかしら。
ペペ「これが リンダの墓なのか。
ただ たんに名前が同じっていう
だけじゃないのか……。
ペペ「それに リンダなんて
ごく ありふれた名前だ
私は どうかしていた。
ペペ「リンダは 今も あの町で
イワンと くらしているはずだ。
*「いいえ ちがいます。
グリンフレークという町に
もう リンダはいません。
ペペ「あなたは さっきの!
*「その下に 眠っているのは
まぎれもなく あなたの
おさななじみのリンダです。
*「半年前まで 彼女は
たしかに この修道院で
生活していました。
ペペ「こんなに近くにいて
どうして私に 会いにこないんだ。
おかしいじゃないか!
*「会わす顔が なかったのです。
家族を捨ててきた自分を
彼女は はじていました。
ペペ「こんなところで きみは
さびしく死んでいったのか。
どうしてなんだ!
ペペ「……やはり あのとき
なりふりかまわず きみをつれて
町をでるべきだったのか。
ペペ「おくびょうな私が
きみを不幸にしたんだな。
ごめんよ リンダ。
ペペ「そこまで 私のことを
想ってくれていたなんて
気づきもしなかった。
ペペ「みなさんが いなかったら
この先 リンダの死を 知らずに
すごしていたかもしれない。
ペペ「どうも ありがとう。
ペペ「帰りは 私ひとりでも
だいじょうぶなので みなさんは
このまま 旅を続けてください。
*「家族のかたが 墓まいりに
来てくれたんだから ベシアも
天国で よろこんでるわね。
*「あのハーブ園の あるじにだけは
リンダの……ベシアの死を
知らせるつもりでした。
*「だけど ベシアの身の上話を
聞いてるうちに あの人が
にくくなったんです。
*「いつかは 伝えるつもりでしたが
がまんできなくて 少しだけ
意地悪したくなったんです。
アルスは 墓石を調べた。
墓石には メッセージが きざんである。
私は ここにいます。
ここより永遠に あなたの庭を
見守りつづけます。
*「ハーブ園の だんなも もう
いい年だってのに いつまで
独身でいるつもりかのう。
*「うーん ここのハーブティーは
いつ飲んでも うまいねぇ。
*「この ひとときのために 毎回
ハーブを買い付けにくる商人の
ごえいを うけおってるんだ。
ビッキー「うにゃうにゃ!
みゃみゃみゃ?
はい | いいえ | ||
---|---|---|---|
はい |
ビッキー「ひぎぃ〜。 |
いいえ |
ビッキーちがうにゃ〜。 世の中には いいスライムも ビッキー「きみの にんしきは |
ガボ「う〜 言い負かされたぞ。
スライムってのは オイラより
かしこい魔物だったんだな。
*「ねえねえ おやかた様の顔に
涙のあとが あったのよ。
なにか あったのかしら?
*「ふだんの おやかた様は
人のいい 気さくな方だけんど
たまに 人が変わるっぺよ。
*「そんなときは 今みたいに
近よりがたい ふんいきを
ムンムン出しまくってるだよ。
リンダ「どうしたのかなぁ。
パパが 帰ってきたんだけど
なんだか 元気ないみたいなの。
リンダ「しんぱいだにゃ〜。
あっ いけない! ビッキーの
しゃべり方が うつっちゃった。
ペペ「ああ みなさん。
私は今 どうしようもなく
とほうにくれているんです。
ペペ「あのとき リンダの気持ちに
こたえて あげられなかった 私に
できることなど もう何もない。
ペペ「今は ただ リンダの冥福を
心から祈るばかりです……。
マリベル「ペペの 古キズに
塩をぬりこんで やすりで
こするような結果になったわね。
*「おやかた様ったら さっきまで
つぶれたスライムみたいに
テーブルに つっぷしてたの。
*「ほおづえなんか ついて
長い間 ぼーっとしてたけど
カゼでも ひいたのかしらね。
*「なんでか 知んないけどさ
結婚の話すっと おやかた様が
ふきげんに なるらしくってぇ。
*「だからぁ おやかた様の前じゃ
そーゆう話は しちゃダメッ!
つーのがウチの決まりなんだぁ。
*「あ〜あ 今日もヒマだぜ。
昔は この時間になると 死ぬほど
いそがしかったってのによぉ。
*「やっぱ あのころが オレの人生の
ピークだったのかなあ……。
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