＊「おやまあ　旅の方かね。
めずらしい。

＊「このあたりは　すこし前
魔物に　おそわれてのう。

＊「女王さまと　砂漠の族長と
通りすがりの旅人たちが
砂漠を　救って下さったんじゃ。

＊「まさか　あんたがたじゃ
あるまいのう。ほっほっほ。

＊「おむかえが　来る前に
もう一度　女王さまに会えるとは
思いませなんだ。

＊「それほどに　魔物がおった時は
この砂漠は　ひどい事に
なっておりましたよ。

＊「ここは　砂漠の民の城。
いかなる旅人も　通せとの
女王さまの　お言葉。

＊「女王さまに　感謝して
この門を　くぐるとよい！

＊「よいせっと〜　こらせっと〜。
レンガ運びは　ツラいけど〜
女王さまの〜　ためならば〜。

＊「魔物に言われて　運ぶより〜
１００倍　ラクだぜ〜。
あ　よいせっと〜。

＊「ひい……ふう……みい……

＊「話しかけるなよ！
今　レンガを数えてるんだ！

＊「ええっと……　ああもう！
わからなくなっちゃったよ！

＊「まあ　おなつかしゅう。
お城の修理を　はじめた
ところですの。

＊「修理が　終わるまでは
こちらが
女王さまの　玉座になります。

フェデル「ごきげんよう。
よく　たずねて下さいました。
お待ちしておりましたわ。

フェデル「前に　お約束した
お礼を　さしあげようと
ずっと　待っていたのですよ。

フェデル「この城の地下
わたくしの部屋の奥の　廊下に
秘密の階段が　あります。

フェデル「その先に眠る
王家の宝を　アルスさまの
ご自由に　なさいませ。

フェデル「今の　わたくしにできる
せいいっぱいの　お礼です。

フェデル「それと　わたくしから
ひとつ　お願いしたいことが
ございます。

フェデル「あの時　魔王像から外した
闇のルビーのひとつは
みなさまが　お持ちください。

アルスは　闇のルビーを
うけとった！

フェデル「もうひとつは　わたくしが
保管いたします。

フェデル「ふたつの　闇のルビーは
けして　合わせてはならない……
そんな予感が　するのです。

フェデル「あなたがたには　本当に
助けられましたわ。
心より　感謝いたします。

＊「うひゃー　こりゃまた
ハデに壊してくれたもんだ。

＊「ま　ボヤいても　しゃーねえ。
はりきって　いこう！

＊「おい！　ボヤボヤしてると
ケガするぞ！

＊「女王さまに　はやく
もとの　お住まいに
戻ってもらわなくちゃ！

＊「とはいえ　だいぶ修理に
時間が　かかりそうだよなあ。

＊「ここは　図書館でしたの。
さあさ　おかたづけ
おかたづけっと。

＊「あんたら　見かけない顔だな。
おかしな服を着た　じいさんの
知り合いじゃないのか？

＊「まあ　砂漠の魔物も減ったし
崩れた像のほうにも　おれたちの
仲間が　働いてるし。

＊「あんなに　立派だったのに
いったい　どこから　手を
つけたらいいのか……。

＊「奥の像なんか　さわると
グラグラゆれるくらいだし
まったく　ひどいもんだよ。

＊「これでも　ずいぶん
かたずけたのですが……

＊「まだまだ　終わりませんの。
ああ　たいへん！

＊「なんとか　早く　お城を
元どおりにしたいもんじゃ。

＊「ここは　女王さまのお部屋。
ふだんは　こちらで
謁見を　行うのです。

＊「はやく　お戻りいただけるよう
われら巫女も　なれないながら
かたづけをして　いるのです。

＊「秘密の階段を　お探し？

＊「その奥の　廊下らしいと
うかがったことが　あります。
それ以上は　知りませんわ。

＊「秘密の階段は　うまく
見つかりまして？

＊「王家の宝を　隠した部屋には
女王さま以外は　入れない。
みなさんは　特別ですが。

＊「いつまでも　死んだ
みなのことは　忘れまいと。
女王さまの　お言葉です。

＊「わたくしたちは　毎日
こうして　交代で
祈りを　ささげております。

フェデル「みなさまには　感謝しても
したりないほど　助けられました。
ありがとうございます。

フェデル「ご安心を。
もう　迷いはいたしません。

フェデル「どんな　困難があろうとも
今までのことに　くらべれば
なんでも　ありませんもの。

＊「こんにちは　旅の方。
砂漠の民の村へ　ようこそ……
まあ！　あなたがたは！

＊「ごらんの通り　あれから
砂漠は　平和ですわ。
ありがとう　ございます。

＊「よう！　英雄のご一行！
あいかわらず　なんとも
カッコいいねえ！

＊「その　カッコよさに　めんじて
１割　わりびき……と
いきたい　ところだが。

＊「すまねえ。オレも生活が
かかってるんだ。
この笑顔で　カンベンな！

＊「さて……と。
（どうぐ屋）

＊「よう！　あんたがた！
ひさしぶりだな　元気かい？

＊「こっちは　おかげさまで
変わりないよ。魔物はいないし
お日さまは　まぶしい！

＊「おお……　おお！
おまえさんがたか。
うれしいのう。

＊「毎日　お日さまの光を
あびてるおかげで　わしも
若返ったじゃろう？　わっはっは。

＊「また　何があるかわからない
食料は　いつでも　ここに
たくわえておけと。

＊「新しい族長の　命令でしてな。

＊「にゃおーん。

＊「おや　おひさしぶり。
男たちが　毎日　お城の修理で
つかれて　帰ってくるんだ。

＊「だから　あたしは
ごちそう作って　待ってて
あげるわけさ。ふふふっ。

＊「まあまあ　ようこそ！
お変わりありませんか？

＊「せっかく　来ていただいたのに
あの子……　族長は
あいにく　留守ですのよ。

＊「たぶん　ナイラ河のあたりじゃ
ないかと　思いますが。
すみませんねえ。

＊「ようやく　ハディートさまが
村に　おちつかれて
大奥さま　うれしそうですわ。

＊「族長から　よく　お話を
うかがっております！
砂漠の民の　恩人の方ですね。

＊「みなさんの　ご恩に
むくいるためにも　がんばって
お城を　再建しますとも！

＊「ううむ……　数をふやすか
大きなイカダを　作るか
どっちが　いいかなあ。

＊「毎日かかさず　族長は
ナイラを　さかのぼってくんだ。
そして　現場を　見て回る。

＊「すみから　すみまで。
人の　いないような所も
見回って　らっしゃるんだ。

＊「でも　人のいないとこの
なにを　見回るんだろ？

ハディート「アルスか！

ハディート「元気そうだな。
なによりだ。
おれは　見ての通り。

ハディート「くずれた　精霊像から
城の修理に使う　レンガを
イカダで　運んでいる。

ハディート「見ていろ　かならず
城を　元どおりに　してやる。

ハディート「それはそうと　どうだ？
いちど　大地の精霊像の跡へ
行ってみないか？

ハディート「どうだ？
おぼえているか？　ここから
すぐ近くに　魔王像があった。

ハディート「もう　ずいぶん
昔のことのように　思える……。

ハディート「さあ　行こう。

学者「レンガだけで　よくまあ
これほどの……　ん？

学者「おお！　おお！　なんとも
なつかしい顔じゃ！　元気に
しておったか？！

学者「そうかそうか。うん。
わしは　とーっても
楽しく　やっとる。うん。

学者「しかし　この時代のヤツらは
たいしたもんじゃ！

学者「ああ　それにしても
せっかくの像が……
もったいないのう。

ハディート「魔王の像も　今は
この　ありさまだ。

ハディート「ここれは　男たちが
イカダを作り　レンガを
運んでいる。

ハディート「…………。

ハディート「おれは　しばらく
見回りを　しなければ。
また後で　な。

＊「やあ！　こんにちは。
族長の　知り合いかい？

＊「ここは　もとは
魔王の像が　あった場所。

＊「でも　いつかは
大地の精霊象が　できるだろう。
みんな　がんばってるからね。

＊「今　おれたち
休み時間で　さ。

＊「けっして　サボッてる
わけじゃないぞ！

＊「こっくり……　こっくり……。

＊「休みなしに　レンガを
運んでると　疲れるだろ？

＊「だから　交代で
やってるんだ。いつもは
オレだって　はたらいてるさ。

＊「ん？　新入りか？
がんばってくれよ。

＊「わしの　まごの　まごの
まごの代　くらいには
大地の精霊像も　できてるさ！

＊「砂漠の民は　気が長いんだ。
新しい族長は　そうでもない
みたいだけどね。

＊「イカダが　もっとあれば
もう少し　仕事も
ラクに　なるんじゃがのう。

＊「となりのヤツは
よう　働くのう……。

＊「わしゃ　コシが痛いよ。

＊「ほいさっ　ほいさっと！

＊「よっしもういっちょ！　

＊「ちょっと前までは　魔物に
おどされて　レンガを
はこんでたんだ。

＊「魔物は　いなくなったけど
今度は　魔物よりコワい
族長が　みはってるんだ。

＊「俺　ぐーたらするのが
好きなんだけどなあ……。

ハディート「その首かざりは
おれが　探していたものだ。
返してくれ！

学者「いやじゃ！
おまえさんが　首かざりを
つけるとは　思えん！

学者「それとも　何か？
この首かざり　おまえさんの
ものという　証拠でもあるのか？

ハディート「証拠はない。
おれのものでもない。しかし
おれは　それが必要なんだ。

学者「そんなもん　わしには
関係ないわい。さあ
行った　行った！

ハディート「この……！

ハディート「おれは　あの首かざりを
女王に返さねば　ならんのだ！

ハディート「おい！　おまえたちの
知り合いなら　こいつに
説明してやってくれ！

学者「わたたたた！　まったく
としよりに　何をする！

学者「やつめ　いきなり来て
わしが　見つけた　首かざりを
よこせと言うんじゃ！

学者「おまえさんたちからも
なんとか　言ってやってくれ！

アルスは　考古学者に
これまでの　いきさつを
せつめいした。

学者「なに？

学者「すると　これは王家の
あかしとなる　首かざりで
女王の　ものだと。

学者「このあたりで　なくしたものを
この男が　ずっと
探していたと　言うのか？

ハディート「そうだ。だから
返してくれと言っている！

学者「……しかたないのう。

学者「この男は　どうだかわからんが
おまえさんたちの　言うことを
うたがうわけには　いかん。

学者「ほれ。

学者「まったく……きちょうな
出土品を　ぶつぶつ。

ハディート「やれやれ。
おまえたちには　何から何まで
世話に　なりっぱなしだ。

ハディート「そう　この魔王像で
戦ったとき　この首かざりを
落として　しまったんだ。

ハディート「女王の首かざりは
王家のしるし。かならず
見つけ　返さねばと。

ハディート「そして　女王を
疑っていたことを
わびなければと　思っていた。

ハディート「これで　ようやく
女王に　会いにゆける。
すまないな。世話をかけて。

フェデル「まあ　みなさん
おそろいで。どうしました？

ハディート「女王　あなたにこれを
返しにきた。

フェデル「……これは！
魔物に与えた　王家の首かざり。
どうして　あなたがこれを？

ハディート「城を　荒らしていた
魔物から　うばいかえし
おれが　持っていた。

ハディート「くずれる　魔王像で
なくして　しまったのだが
ずっと　探していた。

ハディート「女王に　返すために。

フェデル「そうだったのですか。
わざわざ　ありがとう。

ハディート「礼には　およばない。

ハディート「あなたには　ずいぶん
無礼な　ふるまいをした。
魔物の味方ではないかと　疑いもした。

ハディート「……おわびには
これでも　足りない。
だまって　受けとってくれ。

ハディート「女王　フェデルに
神のご加護が　あらんことを！

ハディート「ほんとうに
おまえたちには　感謝している。

ハディート「気が向いたら　また
遊びに　来てくれ。
じゃあな！

フェデル「ずっと　族長は
この城を　おとずれては
くれなかったのです。

フェデル「用事は　すべて
使いのものに　まかせて。
心配して　おりました。

フェデル「この首かざりには　たくさん
思い出が　あります。
良いことも　悪いことも。

フェデル「今　もうひとつ
良い思い出が　できましたわ。

＊「まあ　みなさま。ごきげんよう。
あいかわらず　お城の修理に
あけくれていますわ。

＊「１１０１……　１１０２……

＊「話しかけるなよ！　今
レンガを　かぞえてるんだ！

＊「１１０４……１１０５……　もう！
わからなくなっちゃったよ！

＊「よいせっと〜　こらせっと〜。
レンガ運びは　楽しい仕事〜。

＊「からだを　動かすの
おれ　けっこう好きなんだ。
よいせっと　こらせっと！

＊「おやまあ　旅のお方かね。

＊「今　お城は修理中なんじゃ。
ほんとうは　もっとずっと
美しい　建物なんじゃよ。

＊「さいきんは　砂漠は
ずいぶん静か　なんですよ。

＊「魔物の数も　へったし。
ありがたい　ことです。

＊「トンテンカンテン
トンテンカンっと。

＊「さあ　直して　直して
直しまくるぞ！

＊「おれも　たまに
崩れた像の　とこから
レンガを　運んできてるんだぜ。

＊「いっそ　大胆に
城の中の　もよう変えを
しちゃうって　手もあるよな。

＊「うーん　どんなふうに
しようかなあ……。

ハディート「アルスには
言葉では　言いあらわせないほど
世話に　なったな。

ハディート「城の修理は　まだまだ
かかりそうだ。
まあ　気長に　やるしかないな。

ハディート「たいした　もてなしは
できないが　よかったら
泊まっていってくれ。

＊「ほんとうに　みなさんには
お世話になりまして。

＊「ええ　わたしも　近ごろは
ずいぶん調子がいいんですよ。

＊「河のむこうに行ったと思ったら
また　すぐ　ひきかえして。
族長も　いそがしい人だよなあー。

＊「よう！　あんたらイカダに
乗りたいのかい？

＊「イカダで　村のほうへ
帰るかい？

学者「ぶつぶつ……　すると
この形を　受け継いで……。

学者「ん？

学者「おお！　おまえさんたちか！
元気かね？　わしは今
楽しく　やっとるよ。

学者「そんなわけで　忙しいんじゃ。
またな。

学者「ぶつぶつ……。

＊「今日は　族長の　見回りがないから
のんびり　ぐーたら　できるよ。

＊「ああ　しあわせ！