＊「とまれ！　何者だ！？
魔物は　村には近づけないはず。
すると　旅人だというのか？

石の壁には　鎖が
つながれている……。

アルスは　門に　きざまれた
文字を読んだ！

そこには　代々の　女王の名が
きざまれていた。

アルスは　門に　きざまれた
文字を読んだ！

そこには　砂漠の歴史が
きざまれていた。

アルスは　本だなを調べた。

「英雄たちの物語」

"神が　この世を　お作りになってから
たくさんの英雄たちが　あらわれた。

"しかし　中でも　いちばん強く
いちばん賢い　英雄を　選ぶなら
答えは　決まりきっている。

"その名は　英雄メルビン
世界中　知らぬ者なき　まさに
英雄の中の　英雄であろう。

アルスは　本だなを調べた。

「大いなる　精霊たち」と
書かれた　本がある。

"この　砂漠を守る　大いなるチカラ
それは　大地の精霊である。

"大地の精霊は　つねに　われわれ
砂漠の民を　守り　みちびく。

"砂漠に　生きるものよ
いかなる時も　大地の精霊への祈りを
忘れるなかれ。

アルスは　石碑にきざまれた　文字を　読んだ。

そこには　こう書いてあった……。

"この世に　生きとし生けるもの
まずは　力強きものとなれ。
力強きものは　心やさしきもの。

"そして　長く長く　生きよ。
正しき道を歩めば　長寿は
おのれに　知識をもたらす。

"やがて　生きとし生けるものには
死が　おとずれようが……。

"願わくば　天の神に　召されるよう
正しき道を　歩め。

"さすれば　やがて　その魂は
この世に　ふたたび　命として
よみがえるだろう。

どろに　まみれた
きずだらけの骨だ……。

＊「ここで　何をしている！

＊「……墓をあらしに
きたのでは　なさそうだな。

＊「見たことのない　姿。
おまえたちは　旅人か？
おれの　言うことが　わかるか？

＊「それを　夜ごと　あらしにくる
魔物がいる。こらしめて
やらねば　気がすまん。

＊「ジャマだ。
村ならこの先　城より東にある。
おれの名を言えば　入れてくれる。

＊「おれの名は　ハディート。
さっさと　立ち去るがいい。

ハディート「女王め……。
ひとりだけ　逃げ出すなどと……。

＊「こうしては……おられぬ。

＊「待て！　ムチャだ！！
そんな体で　村の外へ出る気か？

＊「女王さま……　命にかえて…も
魔物から　お救い…いたします。

＊「………………。

＊「むっ！？　お前たちは…。

＊「なに？　ハディートという若者に
この村のことを　聞いただと？

＊「……ならば　よかろう！
村で　休みたいなら
族長さまに　おねがいするんだな！

＊「この村の中は　安全だ。
安心するんだな。

＊「村の　まん中にある　大きいツボ。
あのツボの　魔法のチカラが
村に　魔物を　よせつけないんだ。

＊「おかげで　年よりや女ばかりの
この村も　魔物から身を守れる。
大地の精霊さまの　ご加護さ。

＊「ふにゃーん。

＊「うう…ん。
神さま　おたすけを……。

＊「魔物が…また……
どうして　みんな死んで
……うーん。

＊「この砂漠は　ひどいもんさ
城も　女王さまも　魔物に
やられちまった。

＊「俺も　足の古傷がなきゃ
死んでたか　ナイラの向こうで
はたらかされて　いただろうな。

＊「ほう……　ほう……。
おぬしらには　不思議な
光を　感じるのう。

＊「おっと！　何も　言わんでいい。
……ほう。　旅のお方　わしに
チカラを　かりたいのでは　ないか？
（教会）

アルスは　大きなツボを　調べた！

ツボからは　不思議なチカラが
感じられる……。

＊「暗い　空じゃ。　もう何日も
おひさまを　見ていない。
きっと神さまが　お怒りなんじゃ。

＊「女王さまと　城のものを
助けもできず　ただ
身をひそめていた　わしらにな。

倉庫に入ろうとすると

＊「何をしている！

＊「ここは　立ち入り禁止だ。
さあ　あっちへ　行け。

＊「空が　暗くなってから
母なるナイラは　あれくるい
魚を　とることができない。

＊「この地下には　のこり少ない
食べものを　たくわえてある。

＊「族長さまの　ゆるし　なしには
近付くことは　ならぬ。
あっちへ　行っていろ。

＊「女王さまは　死んじまった。
若い男は　さらわれて
おぞましい魔物の像を作ってる。

＊「神さまも　大地の精霊さまも
なんで　だまって見てるんだい？
どうして　助けてくれないんだ！

＊「あちらに　いらっしゃるのが
族長の　ザラシュトロさまです。

族長「こんな時に　旅人とはな。
ふうむ。城で会った男に
この村のことを聞いたと？

族長「……ゴホッ　ゴホッ！

族長「これは　失礼した。
どうも　近ごろ
体の調子が　おかしくての。

族長「それでも　生きているだけ
わしは　幸せものじゃ。

族長「しかし　まだ城に魔物が……。
なんということじゃ。

族長「お疲れじゃろう。
今夜は　わしの家へ
泊まって行くといい。

族長「２階の　むすこの部屋を
使いなされ。

神秘的な　石像が　かざられている。

＊「２階に上がって　すぐのお部屋を
ご自由に　お使いください。

＊「次の族長さまの　お部屋ですが
しばらく前に　出てったきり
戻ってこないんですよ。

＊「しかしまあ　ほんとに
どこで何を　してなさるやら。

＊「うつら……　うつら……

＊「ハディート！

＊「あらあら　寝ぼけちゃって。
いえ　息子の夢を　見てましてね。

＊「お客さま？　ごめんなさいね。
体が悪いものですから。
きちんと　ごあいさつできなくて。

＊「息子の　ハディートは
ずいぶん前に　村を
出ていったっきり。

＊「今度　いつ魔物が
せめてくるかも　しれないと
思うと　心細くってねえ。

＊「村で　生き残った若い男は
あの子　だけなのに。
どこでどうして　いるやらねえ。

ベッドがある……。
ここで　休んでいきますか？

族長「お目覚めか　お客人。

外に出ようとすると

族長「すこしばかり　お客人に
話が　ありましてな。

族長「もうしわけないが
こちらへ　来ていただけぬか。

族長「フム…お客人　よく眠れたかな？

族長「外のようすで　おわかりだろう。
しばらく前　この砂漠に
魔物が　せめてきたんじゃ。

族長「われら砂漠の民は　ちょうど
大地の精霊の像を　作っていた。
やつらは　そこに目をつけた。

族長「像を　魔王像に作りかえろ
さもなくば　みな殺しだという。
仕方なし　われらは　したがった。

族長「じゃが　やつらは
そのうえ娘たちを　毎年
ひとりずつ　差し出せと言うのだ！

族長「女王さまは　ご自分が　娘たちの
身代わりになると　魔物のもとへ。
……それっきり　戻って来ない。

族長「そのあと　すぐに　お日さまが
かくれ　砂漠は　暗闇に。

族長「今は　住むものもない城に
魔物があらわれ　むくろを
もてあそんで　いるようだが……。

族長「追い払って　やろうにも
村には　戦えるものは
もう　残っては　おらぬ。

族長「……さあ　旅の方
この砂漠から　立ち去るがよい。

族長「ひとり　ふたりの　ちからでは
どうにもならん。
城には　近づかんことじゃ。

族長「女王さまの　ゆくえも知れず
城も　ほろぼされたというのに
わしらだけが　生き恥をさらす。

族長「なかまの　むくろを
魔物が　はずかしめようとも
としよりには　何もできぬ。

族長「城の魔物は　強い。
旅人よ　はやく
この砂漠から　立ち去ることじゃ。

族長「まちがっても　城に
もう一度　行こうなどとは
考えんようにな。

＊「そうそう　族長さまから
ことづかって　おります。

＊「村には　宿がありませんので
この部屋でよければ　いつでも
お使いくださいとの　ことです。

＊「おやあ？　気のせいか？
生きのいい　ニンゲンの
ニオイが　するなぁ。

どろに　まみれた
きずだらけの骨のようだ……。

＊「なんだあ！？

＊「こりゃあ　たまげた。
まだ　生き残りがいたとはね。
へっへっへ　うれしいねえ。

＊「たまにゃあ　生きてるのを
いたぶらなくっちゃな！

ハディート「とうとう　見つけたぞ！
われらが　同胞を汚すもの！

ハディート「やつざきに　しても
気がすまん……？

ハディート「おまえたちは！

ハディート「何をしている！
この城へは　近づくなと
言ったはずだ！

＊「おやまあ　今日はいい日だあ。
まぁた　おもちゃが　増えた。

＊「ホラ　来いよぉ！
まとめて　かかってきな！

ハディート「だまれ！

ハディート「こいつを　片づけるぞ。
ジャマだけは　するなよ！

＊「ま…まてよぉ！　
オレを　殺していいのかあ？

ハディート「いまさら　命ごいか。
何のつもりだ？

＊「ほら！　ほら見ろ！
この首かざりが　何だか
わかるだろぉ？！

＊「おまえらの　女王さまが
くれたのよ。オレは
女王さまの　お気に入りだぜ？

＊「おまえら　この首かざりの
持ち主の　言うことは　なぁんでも
聞くんだろ？

ハディート「……話は
それで　終わりか？

＊「おい！　おい！　なんだよぉ！
話が　ちがうじゃねえかっ！？
待てってば……。

ハディート「この　首かざりは
たしかに　王家のもの。それを
魔物に　くれてやっただと！

ハディート「ケガを　したようだな。
ひとまずは　手当てをしてやる。

ハディートは　アルスたちに
やくそうを　使った！

ハディート「危ないから　城に近づくなと
あれほど　言ったろう！
この　バカものどもが。

ハディート「砂漠の民の　問題に
いらぬ　おせっかいを！
…まあいい。　いちおう礼は言う。

ハディート「さあ　村まで　送ろう。
おれに　ついてこい。

城の外は　はげしい　砂嵐で
前が　見えない。

今は　外へ出ないほうが
よさそうだ。

ハディート「困ったな……。

ハディート「外は　ひどい嵐だ。
こうなっては　待つよりほかに
方法はない。

ハディート「ふむ。どうせなら……。

ハディート「よし！　地下へもどるぞ！

ハディート「待っているあいだ
どうせ　することがないだろう。

ハディート「墓を　つくるのを
手伝っていけ。

ハディート「おせっかいな　お前たちだ。
文句は　なかろう？

ガボ「よいしょ　よいしょ。
そーっと　運ばなきゃ
キズついちまうぞ！

マリベル「なんで　あたしが
こんなこと　しなきゃ
ならないのよ！

マリベル「穴ほりなんて
男の　仕事でしょっ！？

ハディート「穴ほりが　イヤなら
死体はこびと　代わっても
いいんだぞ？

マリベル「わかったわよ！
やれば　いいんでしょ。

ハディート「そういえば　お前たち。
まだ　名前を聞いていなかったな。

マリベル「今ごろ　おそいわよ！

マリベル「……まあいいわ。
あたしは　マリベル。

ガボ「オイラ　ガボだ！
よろしくな！

アルスは　ハディートに
自己紹介を　した。

ハディート「そうか。
……ふむ。ずいぶん長い旅を
してきたようだな。

ハディート「この　砂漠のほかにも
魔物に　苦しめられている人々が
いるとはな。

ハディート「だが　民の苦しみは
魔物のせい　だけではない。
女王が……。

ハディート「魔物が　言っていただろう。
女王は　命ごいのため
首かざりを　さしだしたと。

ハディート「自らの民を　見捨て
おのれだけ　助かろうと……。
いや……　明日　話そう。

ハディート「疲れたろう。
すこし　休むといい。
おれが　見はっている。

ハディート「目が　さめたのか。

ハディート「つい　この間までは
この城も　りっぱな　城だった。

ハディート「砂漠には　昔から
魔物がいたが　大した数ではない。

ハディート「……ところが　女王は
魔物を　砂漠から　追い払うため
精霊の像を　作ると　言い出した。

ハディート「男たちは　けんめいに
働き　大地の精霊の像を作った。
それが魔物の王に　目をつけられた。

ハディート「砂漠は　闇にとざされ
多くの同胞が　いのちを落とした。
精霊の像を　守ろうとして。

ハディート「砂漠の民ならば　精霊に
たよらずとも　自らの腕で
魔物ぐらい　たおせるはず。

ハディート「城が　ほろぼされ
仲間たちが　死んだのは
女王が　あの像を作ろうとしたからだ。

ハディート「……こんなことを　言うのは
村でも　おれひとり　だがな。

ハディート「……外が　だいぶ
静かになったな。

ハディート「よし！　村へ戻るぞ！

できあがったばかりの　墓がある。

ハディート「遅いぞ　おまえたち。

ハディート「さあ　村へ戻ろう。

＊「……まさか！

＊「生きていた……。

＊「ハディートさまだー！
みんな　ハディートさまが
生きて　帰ったぞー！

＊「ハディートさまさえ
帰ってくりゃあ　もう安心だ。
いやあ　よかったよかった。

＊「ハディートさまは　きっと
戻ってくるって　信じてたよ！

＊「ティラノスで　魔物のねじろに
なぐりこむ時のために
武器も薬も　用意しといたぜ！

＊「ティラノスは　無事に
見つかったのかしら。
それに　女王さまは？

＊「悪魔の像を　作らされてる
うちの息子は？
若長さまに　話を聞かなきゃ！

＊「ハディートさま
よう　生きて帰られた。

＊「はて……。
ずいぶんと　けわしい顔を
なさっておいでじゃが……

＊「神の竜　ティラノスは
われらが呼び声にも
応えなかったというのか？

＊「希望のひとつは　やぶれ
あらたな希望は　うたがいの
うちに　ある。

＊「予感がする……　ほう。
（教会）

＊「おお……　おお……
ようやっと　お戻りじゃ。

＊「この広い砂漠
はるかなる　ナイラの流れ。

＊「たった　おひとりで
いにしえの竜を探し出すとは
さぞや　お疲れでしょうなあ。

＊「本当に　本物の
ハディートさまかい！？

＊「あたしゃ　もう
魔物に　頭から食われて
死んじまったとばかり……。

＊「でも……でも
帰ってきたんだねぇ。

ハディート「父ザラシュトロ！
偉大なる　砂漠の民の族長よ！

ハディート「息子　ハディートが
話がある！
いずこに　おられるか！？

族長「ひさしぶり　じゃな。
この村は　なんとか
死人も出ず　もちこたえておる。

族長「空が　暗くなって　ひさしい。
女王さまの　ゆくえも知れず
村人も　不安をつのらせておる。

族長「いまや　希望は　おまえだけ。
どうじゃ？　ナイラの流れに
いにしえの竜は見いだせたか？

族長「ナイラに眠る　神の竜
ティラノスの力を借り
悪しき　魔物を……。

ハディート「……ティラノスは
まだ　見つからん。

族長「なに？

ハディート「城に　魔物があらわれ
地下のむくろを　荒らしていた
そのことは　ご存知だろう。

ハディート「魔物は　こらしめた。
旅人たちの　加勢もあってな。
ついでに　墓も　たてておいた。

族長「おお……　なんという。
旅の方　みなを　代表して
感謝させて　いただきますぞ。

ハディート「話は　これからだ。
魔物は　これを　持っていた。

族長「この輝き　まさか……！

ハディート「そうだ。　女王が
先代より受けついだ
砂漠の王者たるあかし。

ハディート「こともあろうに　女王は
それを　命ごいのため
魔物に　くれてやったのだ！

ハディート「あれが　女王になってから
すべての　わざわいは始まった！
これが　そのあかし。

ハディート「おれの　言ったように
精霊の像なぞ　作らなければ
魔物も　やってこなかったのだ！

族長「むう……。

ハディート「この　首かざりは
代々の王や　女王に
うけつがれて　きたものだ。

ハディート「砂漠の　王者のしるし。
こともあろうに　それを
魔物に　くれてやっただと！？

ハディート「おれは　あんなやつが
女王だなどとは　認めん。
すべては　やつのせいなんだ。

＊「おい！　よく聞こえないよ。

＊「押さないでよ！　ちょっと！
村人が　家のまわりを
とりかこんでいる。

外へは　出られそうにない。

＊「まさか　そんなこと
あるわけ　ありませんよ！

＊「でも　ハディートさまが
ウソをつく　はずがないし……。

２階に行こうとすると

族長「お疲れとは思うが
お客人　今しばらく
この場に　いてくださらぬか。

族長「われら砂漠の民は
いにしえより　大地の精霊と
ともに　生きてきた。

族長「さまざまな　姿を持ち
魔をしりぞけ　砂漠を守る
大いなる　チカラ。

族長「精霊像が　完成すれば
魔物たちは　砂漠から
いなくなるはずだったのだ。

ハディート「この　首かざりは
代々の王や　女王に
うけつがれて　きたものだ。

ハディート「砂漠の　王者のしるし。
こともあろうに　それを
魔物に　くれてやっただと！？

ハディート「おれは　あんなやつが
女王だなどとは　認めん。
すべては　やつのせいなんだ。

＊「おまち！　ハディートや。

ハディート「母上か？
顔色が　すぐれないようだが
どこか　体を……。

＊「そう。　としよりや　病人は
歩くことさえ　ままならぬ。
わたしが　いい見本です。

＊「そのうえ　魔物が出ては
われら　弱いものは
村から　一歩も出られぬ。

＊「女王陛下は　われわれ
女や子供　としより　病人のため
精霊の像を　つくられた。

＊「われら弱きものも　安心して
砂漠で　生きられるよう。
魔物を　滅ぼす像を。

＊「そのお方を　悪く言うなどとは！
……ゲホッ　ゲホッ！

＊「おくさま！

＊「ハディートや
まこと　強きものは
心　やさしきもの。

＊「ゆめゆめ　忘れずに……。

（２階に行こうとすると）

ハディート「どこへ行く？
母の心配なら　無用だ。

ハディート「精霊像は　弱い者のため？
それが真実としても　魔物に
命ごいをしたのは　たしかだ。

ハディート「おれには　女王は
信用できん。おまえたちも
はっきり聞いたろう？

族長「しかし　まこと
この首かざりを　魔物が
持っていたというのなら……。

族長「ううむ。　どういうことだ。

ハディート「精霊像は　弱い者のため？
それが真実だとしても　魔物に
命ごいをしたのは　たしかだ。

ハディート「おれには　女王は
信用できん。おまえたちも
はっきり　聞いたろう？

族長「おや？　宝石の下に　何か
はさんで　あるような……。
ふむ　なかなか　とれないな。

族長「むむ　ひっかかって
うまく　はずれない。
……むーん！

族長「おお！　はずれたぞ！
……なんだ　この
折りたたんだ　紙は？

族長「これは！

ハディート「どうしました！？

族長「………………。

ハディート「何ですか　それは？
何が　書いてあるのです！？

族長「神よ……
女王さまに　ご加護を……。

ハディート「父上！

族長「読みたいなら　おまえが
読むといい。

族長「あなたがたも
読んで　行くといい。

族長「まことのことが
知りたいのなら　な。

＊「あー　老眼じゃあ　見えんのう。

＊「押さないでってば！

村人が　家のまわりを
とりかこんでいる。

外へは　出られそうにない。

ハディート「なに……　親愛なる
わが　砂漠の民よ　か。
ふん　しらじらしい。

ハディートは　女王の手紙を
ゆっくりと　読みあげた。

"親愛なる　我が砂漠の民よ
みな　無事でありましょうか。
わたくしは　変わりありません。

"いまいましいことに　こちらでは
とうとう　魔物の像が
完成して　しまいました。

"空が暗く　河も荒れ狂うように
なったのは　魔王の像のせいだと
魔物たちが　言っています。

"魔物の数も　増えたようです。
魚や鳥はとれますか。
ひもじい思いを　していませんか。

"今のところ　集められた男たちは
無事のようですが　いつ
用ずみとされるのか…。

"男たちが　殺される前に
わたくしは　魔王の像の秘密を
探ろうと　思います。

"もし　河を元に戻せれば
逃げ出すのは　たやすいこと。
宝石で　見はりは手なずけました。

"城へ　よく行くという魔物に
首飾りに　かくして
あずけた　この手紙。

"あなたがたに　届くことを
祈っています。
わたくしは　ご心配なく。

"愛する　砂漠の民へ。
……女王　フェデル。

ハディート「………………。

ハディート「父　ザラシュトロ！
おれは　もう一度　村を出る！

ハディート「かならず　いにしえの竜を
探しだし　ナイラをさかのぼって
女王に　直接　会うのだ！

族長「行くがよい。おまえに
大地の精霊の加護が　あらんことを。

ハディート「感謝する！

ハディート「むっ！？
村中で　立ち聞きしていたのか！？
ええい　ジャマだ　どけ！

＊「おくさま　起きたりして
だいじょうぶ　なのかしら？

＊「族長さまも　おかげんが悪いし
ハディートさま　はやく
帰ってきて　くれないかねえ。

＊「神さま　どうぞ　あの子を
お守りくださいまし……。

＊「あらまあ　みなさん。
息子が　お世話になりまして。
ありがとうございました。

＊「まったく　ハディートさまは
声が　大きいんだよ。
ああ　心臓に悪いったら。

＊「そうか　そうか。
女王さまは　生きておいでか。

＊「神さまも　まだ　わしらを
お見捨てでは　ないようじゃの。

＊「ふふふ　うちの息子
生きてるんだね！
あたしも　元気が　わいてきたよ！

＊「ハディートさまが　女王さまを
うたがって　おいでとは。

＊「でも　ごかいもとけた！
うまく　竜が見つかると
いいけどな。

＊「ハディートさまさえ
かえってくりゃあ　もう安心だ。
いやあ　よかったよかった。

＊「いかん！　地下の見はりを
忘れておった！

＊「しかし……　女王さま
そんなにまで　わしらのことを。

族長「まったく……
いそがしい息子じゃ。

族長「さて　どうやら　城の
魔物を　こらしめる
手伝いを　なさったとか。

族長「感謝　いたしますぞ。
これで　同胞も
安らかに眠れる。

族長「みなさまの　やさしき心に
砂漠の民を　代表して
お礼を　さしあげよう。

アルスは　さばくのお守りを
お礼に　もらった！

族長「それを　見せれば
砂漠の民は　あなたがたに
かならず　協力する。

族長「天の国の　仲間にかわり
お礼を。　あなたがたの　旅に
神のご加護が　あらんことを。

＊「ハディートさまも　女王さまも
生きてたんだ！　くよくよは　してられないよ。

＊「女王さまが　戻るまで
魔物も獣も　一匹たりとも
この村には　入れないぞ！

さばくのお守りを　見せますか？

＊「にゃーん。

さばくのお守りを　見せますか？

＊「あんたがた！
聞いてくださいよ
うちの息子　生きてるって！

＊「生きてるって　いうんですよ。
女王さまがね　ほんとに
そう　おっしゃったんですよ！

さばくのお守りを　見せますか？

＊「あんたら　ハディートさまを
追いかけるのかい？

＊「なら　うちの道具で
装備を　整えたほうがいいぜ！

さばくのお守りを　見せますか？

＊「女王さまが　わしらのことを。
ありがたいことじゃ。

＊「神さま　どうか
女王さまを　お守りください。

さばくのお守りを　見せますか？

＊「女王さまが　生きてたんだよ！
男たちも　まだ生きてるんだよ！
はりきらずに　いられるかい！

さばくのお守りを　見せますか？

＊「あらたな希望は　見つかった。
信じることが　道を開く……。

さばくのお守りを　見せますか？

＊「女王さまの　お言葉
胸に　しみいった。

＊「大事な　食料も
娘たちも　わしが　守らねば！

＊「…………はっ
今　何も　聞かなかったな？

さばくのお守りを　見せますか？

アルスは　ふくろを
あけようとした。

すると……。

＊「きゃっ！　だれ？　あなたたち。
魔物じゃあ　ないみたいね。

＊「上が　さわがしかったけど
何か　あったの？

＊「ほんと？
女王さま　無事なのね。
よかった……。

＊「大地の精霊の像を　魔王像に
作りかえるための　工事は
つい　このあいだ　始まったの。

＊「ほとんど　完成という時に
魔物が　せめてきて
顔を　すげかえたのよ。

＊「だから　魔王像とはいえ
そのほとんどは　精霊の像のまま。
皮肉なものよね。

アルスは　ふくろを
あけようとした。

すると……。

＊「あなたたち　旅人ね。
外から　来たの？

＊「まあ　女王さまは
生きて　らっしゃるのね！
よかった……。

＊「魔王像までは　遠いわ。
歩いては　とても　たどり着けない。

＊「ずっと　ずっと　ナイラを
さかのぼって行って
河の　はるか上流に　あるの。

＊「泳いで？　とんでもない。

アルスは　ふくろを
あけようとした。

すると……。

＊「だれ？　あなたたち。

＊「さっき　どなってたの
ハディートさん　でしょ？

＊「村の用事で　お城へ来た時も
大きな声で　いそがしそうな
人だったわね。

＊「むかし　おばあちゃんに
聞いたの。

＊「死んだひとは　いつか
生まれ変わる。

＊「蛇が　皮をぬぐように
新しい命に　生まれるのだって。

＊「もちろん　生きてたとき
行いの　正しかったひと
だけらしいけど。

族長「お守りを　見せれば
砂漠の民は　あなたがたに
かならず　協力する。

族長「天の国の　仲間にかわり
お礼を。あなたがたの　旅に
神のご加護が　あらんことを。

さばくのお守りを　見せますか？

＊「おくさま　起きたりして
だいじょうぶ　なのかしら？

＊「族長さまも　おかげんが悪いし
ハディートさま　はやく
帰ってきて　くれないかねえ。

さばくのお守りを　見せますか？

＊「神さま　どうぞ　あの子を
お守りくださいまし……。

＊「あらまあ　みなさん。
息子が　お世話になりまして。
ありがとうございました。

さばくのお守りを　見せますか？

ハディート「ひどいものだ。
魚いっぴき　見あたらない。

ハディート「いくら　ティラノスと
いえども　これでは　きっと
生きてはいけない……。

ハディート「おまえたち……。
……残念だが　ナイラには
ティラノスどころか　魚さえいない。

ハディート「すでに　滅びたか
この　にごった河を　はなれて
どこか他の場所へ　移り住んだか。

ハディート「おまえたち　旅人だったな。
ティラノスらしき　竜のうわさを
どこかで聞いたことは　ないか？

ハディート「たとえ死にたえたとしても
あの　見事な　金色のツノは
きっと　人びとの目をひくはず。

ハディート「……まあいい
おれは　まだ　あきらめない。
じゃあな。

＊「じめん　ほれば
すごーいものが　出てくるのかあ。

＊「ぼくも　うちのにわを
ほってみようかな。

＊「おじいちゃんったら。毎日
通ってきてるってのに
すぐに　忘れちゃうのよ。

＊「そんなもん　わしゃ　いっぺんも
見たことがないぞ！　なんて
毎日　いいはるのよ。

＊「もーう！　いちにち　５ゴールド
ドブに　すてる　この気持ち！
あんたたち　わかる？

＊「わたしが　払うのよ！　わかる？
もう！　だれか　あの骨
どっかへ　もってっちゃってよ！

＊「あんな骨が　あるから
毎日　５ゴールドずつ
ドブに捨てるハメになるのよ。

＊「もう！　だれか　あの骨を
どっかへ　もってちゃって
くれないかしらね！

＊「わたしは　もう　５回目なんです。

＊「それにしても　あの骨は
すごい！　わざわざ　町から
見にくるだけの　ことはある。

＊「ぴかぴか光る　角をもった
動物なんて　世界中さがしても
いませんよ。

＊「昔は　ふしぎな生き物が
生きてたんだなあ……。

＊「キエーッ！

＊「クププルクププル！

＊「ドガドガドガグォーン！

＊「どうも　ピッタリこないな。
あの　ふしぎな骨の　生き物
どんな　鳴き声だったんだろう。

＊「はいはい　いらっしゃいー。
５ゴールド　はらって
うしろに　ならんでねー　……ん？

＊「なんだ　センセに　ごよう？
それなら　お金は　いいよー。
どんどん　入ってねー。

学者「いくら　しらべても
この骨のことは　わからん。

学者「いや　今まで　発掘した
ツボにせよ　カタナにせよ
ほんとうの　姿は　わからん。

学者「とんでもない　カン違いをして
いたとしても　わしには何も
わからん。間違えていることさえ。

学者「もしも……もしも　わしが
この骨と　同じ時代に
生きていたとしたら。

学者「ツボも　カタナも　古文書も
不思議な骨さえも　ひと目で
真実の姿がわかるだろうに。

学者「もしも……　もしも
はるか昔へ　行くことが……
……むなしい　夢　じゃな。

学者「ん？　なんじゃ　見学か？
勝手に　見てゆくといい。
ただし　さわるなよ。

＊「そろそろ　トンズラするのが
かしこい　あきんどだけど
まだ　いけそうだし……。

＊「んー　なんでもないよー。
センセ　げんきー？

学者「……なに？
この骨について　知りたい？
ふむ。よい心がけじゃ。

学者「この頭の骨の　大きさ！
おどろいたろう？　じゃが
全身は　こんなものではない。

学者「４人の大人が　背中の上で
寝ころがれるほどの　図体を
していたはずじゃ！

学者「まわりからは　魚や水草の
化石も出ておる。こいつは
水の中で生きていたらしい。

学者「魚の種類からすると
おそらく　海ではなく河に
住んでいたのでは　ないか？

学者「そう。かんじんなことを
忘れてはならん。化石の
頭の　真ん中を見ろ！

学者「悠久の時を超え　かがやく
黄金の角……　ああ　悠久とは
長い長い間のことじゃよ。

学者「金色の角をもつ　この生き物は
きっと　おそれ　うやまわれて
いたのでは　なかろうか。

学者「どうじゃ？　わかったかね？

砂漠での　できごとを
この人に　話しますか？

砂漠での　できごとを
この人に　話しますか？

学者「どうした？　まだ何か用か？
それとも　証拠を
もってきたとでも　いうのか？

さばくのお守りを見せますか？

学者「どうした？　まだ何か用か？
それとも　証拠を
もってきたとでも　いうのか？

さばくのお守りを見せますか？

学者「よし！　行くぞ！
いにしえの　知　もとめ
はるか古代へ！

＊「あれっ？　せんせぇ
どっかへ　お出かけで？

＊「お気をつけて。なぁに
現場には　ネズミ一匹
入れませんや！　ご安心を！

＊「オー　センセ　こんにちはー。
いい天気ねー。
おでかけ　イイねー。

＊「ワタシ　センセ大好き！
でも　そろそろ　お別れねー。
だからワタシのこと　忘れてね？

学者「なんじゃ？　おまえさん。

＊「知らない！　それ　スバラシイ。
またねー。センセ　元気でね。

学者「なんじゃ？

＊「ちょっと　先生
なんとか　してくださいよ。

＊「見るだけで　一回
５ゴールドは　ちょっと
高いんじゃありません？

＊「大発見とは　知ってますけどね
でもね　ぶつぶつ……。

学者「なんじゃ？

＊「おや　おまえさん　わしの
息子じゃ　ないかね？

学者「……………？

＊「いや　娘じゃったかのう？
しかし　娘にヒゲは生えんし
すると　猫かのう？

＊「どうも　このごろ　頭が
スッキリせんのう。
ボケて　きたかのう。

＊「ピモモモモモ！

＊「バガンバガン！

＊「ヒギャーップ！

＊「どの鳴き声が　いちばん
近いですかね　先生？

学者「知るか。骨はしゃべらん。

＊「あの骨　無口だったのか。
うーん　とすると……。

＊「おや　めずらしい。
先生　そちらは
お孫さんか　なにかで？

学者「ばかもん！
こんな　デカい孫がいるほど
年を　とっては　おらん！

学者「まったく……ぶつぶつ。

＊「おやおや　先生
お出かけですか？

学者「おおいなる　知識を
もとめ　旅する！

学者「それが　われら
学者のつとめ　ですからな。

＊「あれ　どっか　いくの？
わかった！　またべつのとこ
ほりにいくんだね！

＊「おお！
砂漠？　海の真ん中の
島に　いたはずでは？

＊「しかし　こんな地形は
聞いたこともない。
すると　やはり……。

＊「ここは　はるか
いにしえの世界だと？
おお　神よ！感謝しますぞ！

＊「さあ！　遺跡はどっちだ？
はやく　連れていってくれ！

（城以外に入ろうとすると）

＊「こら！　どこへ行く！
さっさと　わしを
近くの遺跡に　つれてゆけ！

学者「おお……　ほとんど
完全な姿のままじゃ！

学者「この様式は……
すると　この時代は……
む　あれは！

学者「うう……む。
あれは　まさか！？

学者「おおおお！

学者「…………すばらしい。
まさか　この目で……
おお……　神よ……

学者「ぶつぶつ……。

学者「あの　碑文から見ても……
つまりは　祭の……

学者「ぶつぶつ…　とすると…

学者「ん？　なんじゃ　お前ら。
まだ　おったのか？

学者「わしゃ　いそがしい。
話は　あとだ　あと！

学者「骨なら　返さんでいい。
この大発見に　くらべたら
どうでもいいわい。

学者「ぶつぶつ……。

学者「ぶつぶつ……。

学者「……と考えると……
だから……　ぶつぶつ……。

＊「学者の先生　いなくなったら
べつの　先生が　来たんだ。

＊「でも　また　お金とるんだ。
大人って　ケチだよね。

＊「まったくもう！
先生も　骨も　やっと
どっか行ったっていうのに。

＊「また　わけわかんないのが
来ちゃったわよ！
また　５ゴールドよ！

＊「わたしが　払うのよ！　わかる？
おじいちゃんにも　困った
もんだわよ！

＊「あたしゃ　ずーっと前から
ならんでるんだ。
ああ　はやく　見たいねえ。

＊「こないだまで　あった骨より
うーんと　すごい骨が
見つかったらしいんです！

＊「う〜ん　ワクワクしますね！

＊「ボボボボボーン！

＊「ガッラガッラ！！

＊「ベホロゴアヒョーン！！

＊「どんな　鳴き声だったのかな？
うう　はやく見たい！

＊「見物は　おひとりさま
５ゴールドと　なっております。
よろしいですか？

＊「前に　ここにいた　商人？
ああ……！　いえ　知りません！

＊「ホントに　知りませんったら！
テントの中になんて
ぜったい　いませんよ！

＊「さあ　どーぞ　どーぞ
ふしぎな骨　見てってねー。

ひたいに　金色の角をもった
おおきな　生き物の　化石だが……

角のペンキが　はげかけている

さわってみますか？
はい　いいえ両方

＊「うふふ　驚いたでしょ？
世にもめずらしい　叫ぶ化石！
１０ゴールドで見れる　安いねー。

＊「ワタシの声と　似てる？
気のせいねー。ワタシ
しゃべってない。ホントよ。

＊「ん？　なんだ　おめぇら。
言っとくが　ここは　立ち入り禁止だ。

＊「せんせぇの　留守は
おれが　しっかり守るんだ。
勝手に　入るなよ！

＊「もうすぐ　ひとつ
命の火が　消える　……ほう。

＊「わしも　おぬしらも
獣も　いずれは　死ぬ。
さだめは　変えられぬ　……ほう。

＊「ほう……。　わしに　何か
用があるのだろう？
……ほう。

アルスは　ふくろを調べた。

しかし　ふくろは　からっぽだった……。

＊「ああ　あんたたちか！
大変なんだよ！
族長が　急に　倒れられて……。

＊「あとつぎの　ハディートさまに
知らせようにも
どこにいるのか　わかりゃしない！

＊「見はりの　仕事もあるし
族長も　心配だし　ああ　俺は
どうすりゃ　いいんだ！

＊「ああ！どうすりゃいいんだ！
族長さまが　倒れるなんて！
村は　どうなっちまうんだよ！？

＊「ちくしょう……！
なんだって　こんな時に！

＊「まだ　一人息子の
ハディートさまも
帰らねぇってえのによ。

＊「せめて……　ハディートさまが
戻るまでは……。

＊「族長さま……。

＊「…………。

＊「ああ　あんたがたは……。

＊「悪い時に　いや
まにあって　よかったと
言うべきなのか……。

＊「…………。

＊「悪いが　他に話すことは
何もないよ……。

＊「このあいだから　寝たっきりで
目をさまさないんだよ。

＊「女王さまだって　まだ
お戻りにならないのに
今度は……。冗談じゃない。

＊「ようやく奥さまが　お元気に
なられたというのに
今度は　族長が　倒れられた。

＊「今　化け物に攻めこまれたら
ひとたまりも　ないよ。

＊「こんな時に　ハディートさまが
いてくれたらねえ……。

＊「わたしたちに　できるのは
こうして　祈ることだけ。

＊「神よ　族長を　この村の人々を
どうか　お守りくださいまし。

＊「どうか　族長の　いのちを
……神よ　どうか……。

＊「神よ……　お慈悲を。
まだ　天に召されるには
早すぎる……！

＊「どうか……　神さま
お慈悲を……。

＊「族長の　いのちを
お助けください……。

＊「ハディートさまは　まったく
どこで　どうしているやら
族長の　一大事だってぇのに。

＊「いつまでも　ふらふらと。
こんな時に　いないなんて……。

＊「何を　言うか！

＊「ハディートさまは　村のため
砂漠の民すべてのため
旅に出ておられる！

＊「神の竜　ティラノスを探し出し
魔物から　女王さまを
お救いして……。

＊「すぐに　帰ってくるんじゃ！
きっと　すぐに……。

＊「あとつぎの　ハディートさまが
ティラノスを　探すと言って
出てったのは　いつだったっけ。

＊「ああ……　何だっていいから
早く　帰ってきて
くれないかねぇ……。

＊「とらわれの女王さまと
同胞を　救い出すことが
今は　何よりも　大事じゃ。

＊「そのためには　何としても
いにしえの竜　ティラノスを
探し出さねば　ならん。

＊「じゃが……　もし　今
ハディートさまが　おられたら
どんなに……。

＊「主人は……もう　だめかも
知れません。

＊「この間　急に倒れてから
ずっと　目を覚まさないの。
きっと……　もう……。

＊「主人も　あなたがたに
最後に会えて　喜んでいますわ。
どうか　あいさつしてあげて。

＊「あとは　あの子が
戻ってきてくれれば……。

族長は　ぐったりと　ベッドに
身を　横たえている……。

＊「あっ！

＊「ハディートさま！？

＊「よかった！
ハディートさまが　帰ってきた！

＊「これで　族長さまも
きっと　元気になるさ。なあ？

＊「やったぜ！　やっぱり
ハディートさまは
帰ってきなさった！

＊「きっと　ティラノスを
見つけて　ご報告に
いらしたに違いねぇ。

＊「ハディートさま……。
わしは信じておりましたぞ。
きっと　お戻りになると。

＊「しかし……　どうも
お顔の色が　すぐれぬような？

＊「ティラノスを　見つけたのなら
もっと　嬉しそうなはず。
では　やはり……。

＊「いいえ　きっと　父親の身を
案じて　厳しい顔を
しているのだわ。きっと……。

＊「ハディートさん
ひとりで　戻ってきたわ。
まだ女王さまは　魔物のところなのね。

＊「神よ……　女王さまと
族長を　お守り下さい。

＊「恐い顔を　していたわ。
きっと　族長のことが
心配なんでしょう。

＊「ハディートさま　あんなに
ほこりまみれに　なって。
急いで　らしたんだねぇ。

＊「族長さまも　奥さまも
お顔を見たら　どんなに
およろこびに　なるか……！

＊「ああ……　やっぱり肉親だねえ。
虫の知らせって　やつだよ。
ありゃあね。わかったんだよ。

＊「よかったねえ。よかったよ。
これで　もしものことが
あっても　安心だ。

＊「……あたしゃ　なんてことを！
とんでもない　とんでもない。
きっと　族長は　もちなおすよ。

＊「なんと！　ハディートさまが
お戻りじゃ！

＊「よう　お戻りになられた。
ほんとうに　
よう　お戻りに……。

＊「ハディート……
よく……　戻って……。

ハディート「…………。

＊「でも……　もう
この人は……。

ハディート「…………。

＊「やっと　ハディートが
戻ってきたというのに……。

＊「…………。

＊「ああ　みなさん！
族長さまの　ご様子は？

＊「奥さまは　下で　待っていろと
おっしゃいましたが
じっとして　いられなくて。

ハディート「おまえたち……！

ハディート「……なぜか
妙な　胸さわぎがして
この村へ　戻ってきた。

ハディート「まさか……
いや　何でもない。
父に　会いにきたのか？

ハディート「あいにく　父は
目を　さまさんそうだ。
まだ　息はある。が……。

＊「あなた！

ハディート「父上！意識が
戻ったのか？

族長「おお　ハディートか……。
見てのとおり　わしは
もうじき　死ぬだろう。

族長「お客人も　遠いところ
よく　来て下さった。
最後に会えて　よかった。

ハディート「…………。

ハディート「父　ザラシュトロ！
あなたは　まだ　死ぬべき
時ではない！

ハディート「おれは　まだ
ティラノスも　見つけていない！
女王にも　会っていない！

ハディート「……あなたが　族長を
つとめていればこそ　おれは
気ままに　やってきたんだ。

族長「……やはり　いにしえの竜は
見つからん　か……。

族長「む……　それは！？

族長「お客人！
その骨を　見せてはくれまいか！
早く……　早く！

族長に　古代の化石を見せますか？

ハディート「…………すまない。
これから　しばらくは
身内のもの　だけに……。

ハディート「席を　はずしてくれ……。

族長「ゲホッ！ゴホッ！
ティラノスの　骨を　
ナイラへ……　お願いする……。

＊「あなた……　あなた
しっかり　して下さい！
あなた……。

ハディート「父は死んだ。

ハディート「下の村の者たちにも
知らせねば　ならん。

ハディート「………………。

＊「うっうっうっ……。

＊「どうして……　わたしを
おいて……。

今は　中に入らないほうが
よさそうだ……。

＊「ハディートさま　ずいぶん
顔色が　悪いわ。　まさか……。

＊「…………。

＊「とうとう……。

＊「きっと　何か
いい知らせに　決まってるよ。
ほかに　何があるってんだい？

＊「…………。

＊「…………。

＊「…………。

＊「今は　ただ　祈りましょう。

＊「ハディートさんの　あんなに
青ざめた顔を　見るのは
はじめてです……。

＊「族長さま……。

＊「…………。

ハディート「みな　よく
集まってくれた。礼を言う。

ハディート「誇り高き　砂漠の民
その偉大なる族長
父　ザラシュトロは　死んだ。

ハディート「…………。

ハディート「おきて通り　葬儀は
明日　ナイラにて　行う。
みな　明日にそなえて……。

ハディート「明日に　そなえて
今日はおのおの　家へ戻れ。
……いいな？

ハディート「……おれも　明日の
仕度がある。失礼する。

ハディート「よし……。
みな　そろったようだな。

ハディート「では　これより
母なるナイラのほとりまで
出発する！いいな！

＊「ほう……　族長は　もうすぐ
天の国へと　かえる……ほう。

＊「最後に　ハディートさまに
会えたのが　せめてもの……。

＊「ああ　族長さま……。

＊「どうして　砂漠の民ばっかり
こんな目に会うんだよ！
うっ　うっ　族長さま……！

＊「おいたわしや……。
族長さまが……　わしが
先じゃと　思っておったのに。

＊「ザラシュトロさまは
本当に　いい族長さまだった。
あたしゃ　忘れませんよ。

＊「あっけないもんだなあ……。
あの　族長さまが……。

＊「天の神と　地に眠りたる
大地の精霊とに　砂漠の族長の
死後の平和を　祈りましょう。

＊「偉大なる　砂漠の族長よ
その魂が　安らかならんことを。
天の国へ　導かれんことを。

＊「誇り高き　砂漠の民の族長
ザラシュトロ……。
安らかに　眠りたまえ。

＊「族長と　わしは
子供の頃　遊びともだちじゃった。

＊「ともに　ナイラで泳ぎ
狩りをし　酒をくみかわし…。
なぜ　先に　行ってしまったんじゃ。

＊「こんどのことで　奥さま
ずいぶん　気落ちなさって。

＊「この上　奥さま　まで
お倒れにならなきゃ
いいんですけど。

＊「まだ　信じられませんよ。
あの人が……。

＊「いつか　こんな日が来るとは
知っては　いましたが
まさか　今日だなんて……。

ひつぎの中には　砂漠の村の　族長
ザラシュトロが　ねむっている…。

ハディート「では　これより
わが父　族長ザラシュトロの
葬儀を行う。

＊「母なるナイラよ　今ここに
正しき道を歩みし　族長
ザラシュトロが　帰る。

＊「誇り高き　砂漠の民
その族長　ザラシュトロは
まこと　正しき道を歩んだ。

＊「ならば　ナイラよ
その腕に　ザラシュトロの
むくろを　抱き……。

＊「天の国へと　導け。
やがて来る　よみがえりの
その時まで……！

ハディート「誇り高き　砂漠の民
偉大なる族長　……我が父
ザラシュトロ！

ハディート「その遺志を　ここに
受けつがんことを　誓う！

ハディート「父　ザラシュトロは
ナイラへと　還った……。

ハディート「今日　この時より
息子ハディートが　砂漠の民の
族長となる！

ハディート「父の名を　けがさぬよう
つとめる　つもりだ。
みな　よろしく頼む！

＊「新しい　族長さまの　誕生だ！

＊「族長さまー！！

＊「ハディートさま！
たよりにしておりますぞ！

ハディート「そうだ　おまえたち。
父の遺言は　おぼえているか？

ハディート「いにしえの竜は　滅びた。
いつまでも　骨をかかえていても
しかたがない。

ハディート「荒れくるう　ナイラにも
負けない　強い　いかだを作るさ。
ティラノスのように強い　いかだを。

ハディート「……ティラノスの魂も
ナイラに　帰りたがっているだろう。
さあ　骨を　ナイラへ！

＊「母なるナイラに　いだかれし
正しき魂は　いずれ
よみがえる……　ほう。

＊「……むかし　砂漠で魔物に
おそわれたところを
助けてもらったんだ。

＊「ほんとうに　いい族長だった。
ハディートさまも　きっと
いい族長に　なるよ。

＊「族長は　おれなんかのことも
いつも　気にかけて　くださったよ。

＊「……へへっ　どうも
ガラにもなく　しめっぽく
なっちまうね。

＊「貧しいもの　弱いものには
ご自分の狩った　動物を
わけ与えられた……。

＊「まこと　立派な族長で
あらせられた。あの方は
わしの　誇りじゃ。

＊「あたしの息子は　族長から
狩りの仕方を　教わったんだ。

＊「あの方は　弓が
誰よりもじょうずでねえ……。

＊「砂漠のことなら　なんでも
知って　いなさった。
じいさんたちよりも　な。

＊「どんなことでも　族長に
聞けば　正しい答えが
返ってきたんだ……。

＊「神よ……。
族長ザラシュトロに
安らかなる　眠りを……。

＊「ナイラ河は　生命の源。
この河へ　かえった人は
いつの日か　かならず……

＊「かならず　よみがえる。
そして新たなる人生を
歩むのです。

＊「砂漠の民は
そう信じて　います。

＊「城から　命からがら
逃れてきた　わたしたちを
かくまってくれた。

＊「そのご恩も　返さぬ　うちに……。

＊「おやさしい　族長さまでしたよ。
目下のものにも　分けへだてなく。
おやさしい　方だった。

＊「あの人は　ザラシュトロは
本当に　立派な族長でした。
＊最後まで　わたしや　息子
村のものの身を　案じて……。

出ようとすると

ハディート「どこへ行く？
さあ　早く　ティラノスの骨を
ナイラに　流すのだ！

ハディート「おまえたちが
ナイラに　ティラノスの骨を
ながしてくれれば……。

ハディート「おれも　ようやく
あきらめが　つく。

ハディート「……さあ　早く
ティラノスの骨を　ナイラへ！

アルスは　ティラノスのほねを
ナイラ河に　そっとうかべた……。

ティラノスのほねは　ナイラ河の底へと
ゆっくりと　沈んでいった……。

ハディート「これで　ティラノスも
……父も　安らかな眠りに
つけるだろう。

ハディート「よし！
みんな　村へ　帰るぞ！

＊「……この　気配……。

＊「大変じゃ！　みなの衆！
ナイラが……！？

＊「なんと……　なんと……！
これぞ　神の奇跡か……？

＊「信じられん！
ティラノスが　復活しよった！

ハディート「ティラノス……？
まさか……いや　これは
夢ではない……！

ハディート「神よ……！　はじめて
あなたに　感謝をささげる！
そして　他でもない　アルス！

ハディート「おまえたちにもだ！
おまえたちの助けが
あってこそ　この奇跡は起きた。

ハディート「だから　おれは
この奇跡に　賭けてみたい。
今　この時に！

ハディート「みな　すまない！
ティラノスが　現れた　今
おれは　族長には　なれない！

ハディート「この　いにしえの竜で
ナイラを　さかのぼり
女王を　助けにゆく！

ハディート「もし　女王とともに
おれが　生きて戻れたなら
その時こそは……。

＊「ええ……　きっと。
みな　あなたを信じて
待っていますとも。

ハディート「ああ　必ず！

ハディート「いにしえの竜……
おれの　言うことが　わかるか？

ハディート「その背に　乗せてくれ。
ナイラを　さかのぼり
女王のもとへ！

ハディート「さあアルス！
おれと　いっしょに　来てくれ。
ナイラをさかのぼり　魔物の巣へ！

ハディート「この　砂漠を　救うには
おまえたちの　ちからが
必要なのだ！

ハディート「心の準備が　できたら
いつでも　おれに話しかけてくれ。

＊「いやー　おったまげた！
骨を竜に　しちまうなんて！
あんたら　すごいなあ！

＊「ハディートさまも
うれしそうだし　よかったよ。
……ところで。

＊「へへへ　こんなことも
あろうかと
商売道具　持ってきたんだぜ。

＊「奇跡　奇跡が起きた！
骨じゃったはずの　竜が
よみがえるとは……！

＊「わしも　まだ　信じられん
……ほう！

＊「なんてこった！　なんてこった！
なあんてこったい！

＊「骨から　あーんなでっかいのが！
まったく　信じられないよ！

＊「ひえええええ！

＊「わしゃ　おどろいて　
コシにきたんじゃ。

＊「まったくもう。おじいちゃん
だいじょうぶですか？

＊「あんまり　びっくりして
腰ぬかしちゃった
らしいのよ。

＊「すげえ……　なんて大きさだ！

＊「ああ　死んだ族長さまにも
見せて　あげたかったよ！

＊「あなたがたも　われらのため
魔王像へと　向かわれるのですね。

＊「どうぞ　お気をつけて…。
神のご加護が　ありますよう。

＊「きっと　ハディートさんは
女王さまを　救ってくださるわ。

＊「旅の無事を　祈りましょう。

＊「ああ！　神はわれらを
お見捨てには　ならなかった！

＊「もしや　あなたがたは
神の使いでは　ありませんか？

＊「わしも　実物を見るのは
はじめてなんじゃ！

＊「いにしえの竜……　なんと
神々しい！

＊「ハディートさまが　行って
しまわれるのは
たしかに　心細い　ものです。

＊「しかし　われら　何とか
おのれの身ぐらいは
守ってみせましょうとも。

＊「ハディートさまが　女王さまを
連れて　戻られる
その日まで……。

＊「いにしえの竜の　復活。
あの人も　きっと
喜んでいますとも。

＊「ああ　みなさん
ありがとうございます。
なんと　お礼を言ったら……。

＊「その　おちからで　どうか
ハディートとともに
女王さまを　お助け下さい！

ハディート「もう　準備はいいのか？

ハディート「……行ったか。

ハディート「ティラノスは　どこへ
帰るのか……　なんにせよ
もう　あともどりは　できない。

ハディート「行くぞ。　覚悟はいいな。

無視すると

ハディート「待て！
ここに　娘が倒れている！

ハディート「おい！　どうした！
まだ　生きているのか？

＊「よかった……　あなたは
砂漠の民の　方……ですね？

ハディート「そうだ。何があった。

＊「祈りをささげねば……
ああ　女王さまが　殺される！
けれど　わたくしには……。

ハディート「しっかりしろ！
何があった？
はじめから　話してみろ！

＊「…………。

＊「わたくしは　女王さまと　ともに
大地の精霊に　おつかえするもの。
……それなのに……。

＊「わたくしたちを　とらえた
魔物は　魔王のために
祈りをささげよと命じたのです。

＊「魔王の像に　精霊の巫女が
祈りを　ささげれば
奴らの　力が増すと。

＊「さからえば　命はないと
言われました。けれど
女王さまは　お断りに。

＊「そうして　どこかへ
閉じこめられてしまったのです。
それで……。

ハディート「魔王像の　中だな！

＊「……あなたがたは？　まあ！
その　お守りは！

＊「そうですか　そんなことが……

＊「ケケケケケ！　逃げられると
思ったのか？　バカめ！

＊「さあ　オマエも戻って
仲間たちと　いっしょに
魔王さまに　祈りをささげるんだ！

＊「……おやぁ？　見かけない顔だな。
ちょうどいい　魔王さまへの
イケニエに　してやろう！

出ようとすると

今は　そんな場合ではない！

＊「おねがいします！
どうか　助けてください！

＊「ホラホラ！　かくごしな！

＊「なんて…こった……。

＊「オマエら…は　何者……。

＊「ありがとうございます！
ああ　ひどいケガを……。
なんと　アルスたちの
体力が　回復した！

＊「これで　だいじょうぶ。
わたくしも　巫女のはしくれ。
傷をいやすだけが　とりえですが。

＊「厚かましいとは　ぞんじますが
どうか　そのお力で　女王さまも
助けては　いただけませんか。

＊「わたくしは　いちばん
年若いからと　仲間たちが
スキを見て　逃がしてくれました。

＊「けれど女王さまたちは　まだ……。
どうか　女王さまと　みんなを
助けて下さい　お願いします！

＊「あなたがたに　神と
大地の精霊の　ご加護を……！
なんと　アルスたちの
体力が　回復した！

アルスは　石碑に刻まれた
文章を　読んだ！

そこには　こう　書いてあった……。

”もし　なんじ　大地の精霊に
会わんと　するならば……

”まずは　砂漠の民の友である
しるしを　示せ。

”次に　正しき砂漠の民の
生き方を　示せ。

”手足の正しき台座に
正しき像を。

”なんじ　正しき答えを　示さば
道は　おのずと　開かれん。

石碑の上には
何かを　はめこめそうな
くぼみが　ある……。

扉には　カギがかかっている。

持っているカギでは
開きそうにない。

アルスは　さばくのお守りを
石碑の　くぼみに　はめた！

どこかで　なにか　重いものが
動く音がした……！

へんじがない……。
ただの　しかばねのようだ。

＊「ううっ……　魔物め……。
働けば　女王さまだけは
助けると　約束したのに……。

＊「おれは　もうダメだ……。
死ぬ前に　もういちど
かあちゃんに　会いたかったよ。

＊「う…ん？
おまえたちも　つかまったのか？
こんな子供まで　かわいそうに。

＊「魔王像が　できあがった　今
おれたちは　ジャマなだけだ。

＊「おまえたち　まだ　動けるなら
魔物に　見つからないように
なんとか　逃げ出すんだ。

＊「ヒヒヒヒヒ　いやはや
精霊さまの　お力は
たいしたもんだなあ。

＊「ホントになあ。　毎日
お祈りしてくださる　おかげで
ヒヒヒヒ。

＊「魔王さまの像も　ヒヒヒ
どんどん　強い光を
放つようになった。ヒヒ。

＊「セトさまも　おれたちも
どーんどん　魔力が
強くなる　ヒヒヒヒ。

＊「大地の精霊の　ご加護を！
ヒヒヒヒヒ　魔王さまに
ご加護を！

＊「この砂漠を　暗黒に包む
魔王さまの像に
大地の精霊の　ご加護を！

＊「ヒーッヒッヒッヒ！

フェデル「……では　城の者は
みな死んだと？

フェデル「では……　では
わたくしは　何のために……？

ハディート「信じようが　信じまいが
事実は事実だ。
もう　城には　誰もいない。

ハディート「城のものの　命と
引きかえに　ここに残って
いるのなら　その必要は……。

フェデル「……もう　疲れました。

フェデル「民の命さえ助かれば
いつの日か　魔物を　砂漠から
しりぞけることもできると……。

フェデル「いやしい魔物たちに　へつらい
けれど　何の意味も　なかった。

フェデル「大地の精霊に仕える
わたくしは　みずから
命を絶つことは　かないませぬ。

フェデル「若き砂漠の民よ　この身を
哀れと思わば　どうか
ひと思いに　わたくしを……！

ハディート「砂漠を　闇に
つつんでいる　魔物の宝石は
この上に　あると言ったな？

フェデル「どこへ　行くのです！
そんなに　傷を負って……！

ハディート「……まだ　村にも
この像の中にも　砂漠の民はいる。
みな　女王を信じて。

ハディート「安心しろ。誰にも言わん。
女王が　自分たちを見捨てて
死のうと　したなどとは。

フェデル「あなたがたは？
……まあ。ハディートの
知り合いなのですね。

フェデル「…………。

フェデル「見苦しい　ところを
見せましたね。わたくしは
この砂漠を　統べるもの。

フェデル「あなたがたが　彼の
友であるならば　どうか
後を　追って下さい。

フェデル「この砂漠を　闇に包み
わたくしたちを　苦しめる
魔物の首領　セト。

フェデル「あ奴が　この像にはめた
一対の　ルビーのちからで
砂漠は　闇に　とざされた。

フェデル「魔王像の　顔から
ルビーを外せば　何もかも
元に　もどるはずです。

フェデル「それを知ったハディートは
傷ついた体で……。

フェデル「ルビーに　手を出せば
セトは　だまっていない。
どうか　彼の　手助けを！

フェデル「……そうだわ
この　カギをお持ちなさい。

アルスは　黒いカギを　もらった！

フェデル「そのカギは　前に　魔物が
落としていったものです。
きっと　何かの役にたつはず。

フェデル「……あなたがたに
大地の精霊と　神のご加護を！

なんと　アルスたちの
体力が　回復した！

フェデル「魔王像の顔に　はめこまれた
一対のルビーを　外せば
砂漠は　もとに戻るはずです。

フェデル「首領セトには　気をつけて。
あなたがたに　大地の精霊と　神の　ご加護を！

なんと　アルスたちの
体力が　回復した！

アルスは　石碑を調べた。

アルスは　石碑にきざまれた
文章を　読んだ！

そこには　こう　書いてあった……

”王者とは　みずから
苦しき道を　選ぶものなり。

＊「さあ　今日もお祈りの時間だ。
さっさと階段を上って
魔王さまのお顔の前へ　行くんだよ。

＊「あとの一人も　じきに来るさぁ。
さっき　オレ様の兄弟分が
連れ戻しに　行ったからなぁ。

＊「どんな姿かは　知らないがな。
ヒャヒャヒャヒャヒャ！

＊「で……では　あの子が
戻ってからでは　いけませんか。
でないと　心配で……。

＊「そうですわ！　もう少し
待って……。

＊「だめだだめだ！　オレが
セトさまに　怒られちまう。
さあ　早く来るんだよ！

＊「ああ……ええと　女王さまは
ご無事なのかしら？

＊「そ　そうよ！女王さまの
無事を　たしかめなければ
言うことは　きけませんわ！

＊「おまえたち　今日
お祈りに行っちゃあ　マズい
理由でも　あるのか……？

ピグモンエビルに負けていた場合

＊「さあ　今日もお祈りの時間だ。
女王さまの命が　おしけりゃ
階段を上るんだよぉ。

＊「３人なかよく　お祈りするんだ。
魔王さまと　セトさまのためにな。
ヒャヒャヒャヒャヒャ！

＊「で……でも　わたくし
今日は　気分が　すぐれなくて。

＊「そうですわ！　わたくしも！
ああ　頭がいたい！

＊「わたくしは　お腹が！
お祈りなんて　できませんわ！

＊「だめだだめだ！　オレが
セトさまに　怒られちまう。
さあ　早く来るんだよ！

＊「でも　その　では少しの間
休ませて　いただけません？

＊「今はちょっと　お祈りする
気分には　なれませんが
もう少し　あとなら……。

＊「おまえたち　今日
お祈りに行っちゃあ　マズい
理由でも　あるのか……？

＊「なんだ　おまえは！？
ジャマする気か！

このピグモンエビルに負けている場合

＊「なんだあ？　まだ生きてたのか？
しつこいな　ジャマをするな！

＊「まだ……　こんな力をもった
連中が……　いた……とは。

女官が三人揃っている場合

＊「まあ　あなたがたは！
どうして　逃げなかったのです！
……いいえ　すみません。

＊「助けていただいたというのに。
ありがとうございます。

＊「今は　魔物を　この上へ
連れてゆくわけには
いかなかったのです……。

＊「ありがとうございます。
助けていただいて。

＊「今　上の階で　われわれ
砂漠の民の　ひとりが
魔王像を　こわそうとしています。

＊「魔物たちに　気づかれないよう
なんとか　時間をかせいで
いたところ　なのです。

＊「ありがとうございます。
あなたがたは　われらと
砂漠の民の　恩人ですわ。

＊「もうすぐ　この　おぞましい
像も　こわれるはず……！

セト｢残念だなあ？　もう少しで
闇のルビーを　はずして
砂漠を　救える所だったのに。

セト「あっはっは!　かわいそうに。
どうした？　もう立てないのか？

ハディート「ぐうっ……　おのれ……！

セト「だいたい　バカにしてるのかい？
手負いの身で　わたしに
向かってくるとは。なあ？

ハディート「ううっ……！

セト｢もとから　チカラの差は
明らかだよ。そのうえ　今
わたしの魔力は　増している。

セト「きみたちの　仲間が
大地の精霊に　祈りを
ささげてくれた　おかげでね。

セト「……おや？　お仲間かい？
じゃあ　きみといっしょに
殺してあげよう！

（中に入ろうとすると）

今は　そんな場合ではない！

ハディート「やつは　強い……。
おまえたち　逃げるんだ……

ハディートうぐっ……！

セト「さあ　来いよ！
遊んでほしいんだろ？

セト「ば…かな…　この　わたしが
やられる　だと……？

セト「ばかな……　ばかな……。
な……ぜ……？

ハディート「……やった…な。
はや…く　像の目から
闇のルビーを……はずせ！

フェデル「ハディート！

フェデル「よかった……まだ
息は　あるようですね。

ハディート「女王……か。
おれ……のことは　どうでもいい。
はやく……　ルビーを……！

フェデル「それでは　まさか
この方たちが　セトを！？

フェデル「……そうなのですね。
では　急がなければ……。

フェデル「わたくしは　長い間
この時を　待っておりました。

フェデル「像の両目に　はめられた
闇のルビーこそ　砂漠の封印を
つかさどる　カギ。

フェデル「さあ　わたくしと　ともに
あの　おぞましい　ルビーを
はずして　くださいますね？

ハディート「おれは……ほっておけ。
はやく……　ルビーを……！

＊「ああ　とうとうセトを
たおして　下さったのですね！

＊「さあ　早く　闇のルビーを！

＊「女王さま　みなさん
よくぞ　ご無事で……！

＊「さあ　早く　闇のルビーを！

＊「あとは　闇のルビーをはずせば
砂漠は　救われるはずです。

＊「さあ　早く　闇のルビーを！

フェデル「わたくしは　ここで
左目の　ルビーを　はずします。
みなさまは　右目のルビーを！

フェデル「……よろしいですか？
わたくしが　まず　こちらの
ルビーを　はずしてみます。

フェデル「……左目のルビーは
はずれました！

フェデル「さあ　そちらの
右目のルビーを　はずして！
砂漠に　ふたたび　光を！！

アルスは　魔王像の
瞳を　ながめた。

魔王の瞳に　はめこまれた
闇のルビーは　邪悪な光で
あたりを　照らしている。

闇のルビーを　はずしますか？

フェデル「よかった……！

フェデル「ずっと　気を　うしなった
ままなので　心配しました。
もう　だいじょうぶですね。

フェデル「では……。

＊「なんだか　まだ信じられないよ。
おれたち　助かったんだよな？

＊「あんたたちも　あの像のとこで
働かされてたのか？
それにしちゃ　見ない顔だな。

＊「女王さまが　いなければ
わたくしたち　きっと
助かりませんでしたわ。

＊「やはり　女王さまは
すばらしいお方。みなさんも
そう　思われるでしょう？

＊「あのとき　とつぜん
女王さまから　まばゆい光が。
そして　気がついたら　ここに。

＊「女王さまと　ナイラの流れと
大地の精霊と　神のご加護の
おかげですわ！

＊「わたくしたちと　女王さまとが
チカラをあわせ　みなさまを
助けることができました。

＊「けれど……。

＊「あんた！　生きてたんだね！
ひとりっきりで　あたしが
どんなに　心細かったか……

＊「ゲホゲホゲホ！
わかったから　あんまり
らんぼうに　たたくなよ！

＊「とつぜん　ものすごい
地ひびきがして　あたりが
まぶしい光に　つつまれて……。

＊「気がついたら　ここにいた。
女王さまの　おチカラってのは
まったく　すごいもんだよ。

＊「魔王の像を　作るため
集められていた男たちも
流されてきたようです。

＊「みな　よろこんでいますわ。

＊「やはり　女王さまは
ご無事でした。
きっと　神の導きの　おかげ。

＊「けれど……。

＊「ああ　みなさん！
ありがとうございます。
おかげで　空も　元どおりに。

＊「ただ　ハディートさんだけが
目をさまさない　ようなのです。

＊「老いた　母君を残してなぞと
そんな　親不孝を
若長がする　はずがない！

＊「きっと　助かるはずじゃ。
われらの　新しい族長は
助かるはずなんじゃ。

＊「なんてこった！
まったく　なんてこったよう！

＊「戻ってきたら　オヤジさんの
跡をついで　族長になるって
言ってたのによう！

＊「ほう……　おまえたちは
助かった……。男たちも
女王さまも……　ほう。

＊「ならば　新しい族長も
神が　見捨てるはずはない。
……祈ろう。……ほう。

＊「ひどいケガを　なさって。
いつも　ムチャばかりする方
でしたからのう……。

＊「これからと　言うときに
　どうして……　こんな……。

＊「この子は　よくやりました。
みなさんも　ごぞんじでしょう。

＊「砂漠は　元にもどり
女王さまを　お助けできた。
みなさんの　おチカラをかりて。

＊「わたしは　この子を
誇りに思います……。

フェデル「……あなたがたを
先に　助けてくれと
村のものに　頼まれました。

フェデル「彼ならば　きっと
そう　言ったろうと。

ハディートは　砂の上に
横たわったまま
ピクリとも　動かない。

フェデル「神よ……　精霊よ
わが祈り　とどくなら
いま一度　奇跡を！

フェデル「この者の命　どうか
いま一度　戻したまえ！

＊「まあ……　まあ！！
ハディートや！　おまえ……
まあ……！

ハディート「あなたが　助けたと？

ハディート「なぜだ？
その理由が　わからん。
……なぜ　助けた？

フェデル「この砂漠に　生きるもの
すべてが　わたくしの民。

フェデル「あなたも　その一人です。
女王として　当然のことでしょう。

ハディート「…………。

ハディート「……感謝する。

＊「まあまあ　つもる話も
ございましょうが　ここは
一度　村へ帰ってから！

＊「女王さまも　みなさんも
お疲れでしょうからな！
さあさ　帰りましょうぞ！

＊「あらあら
もう　お目ざめですか？

＊「もっと　ゆっくりなさって
よろしかったのに。

＊「お城は　ひどいありさまで
とても　人は
暮らせないらしいんです。

＊「ですから　しばらく
女王さまには　この家に
お泊り　いただいてますの。

フェデル「まあ　ごきげんよう。
あなたがたには　言葉では
言いつくせぬほど　お世話に。

フェデル「落ちつきましたら
お礼は　なんなりと
させて　いただきますわ。

フェデル「みな　わたくしを信じて
長い間　待っていてくれました。

フェデル「わたくしは　女王として
彼らを　導かねばなりません。
その思いに　報いるため。

フェデル「城と　村とを　建てなおし
いずれは　もう一度　精霊像を。
それが　わたくしの願いです。

フェデル「ここからは　村が
よく　見渡せます。
わたくしの民　すべてが。

フェデル「城と　村とを　建てなおし
いずれは　もう一度　精霊像を。
それが　わたくしの願いです。

フェデル「あなたがたには　あとで
お礼をさせて　いただきます。
砂漠の民は　約束は守ります。

＊「めまぐるしく　いろんな事が
起きたものですから
まだ　落ちつきませんの。

＊「でも　これだけは　たしか。
闇も　魔物も
砂漠から　去ったのですね！

＊「新しい族長の　ご好意で
この部屋を　お借りしています。

＊「あまり長く　ご迷惑を
かけるわけにも　ゆきません。
早く　お城へ　戻らなくては。

＊「城のことは　聞きました。
みなさんが　お墓をたてて
下さったとか。

＊「ありがとうございます。
勇気ある　かたがた。

＊「今朝の　お日さまの
なんて　まぶしかったこと！

＊「みなさんの　おかげですわ。
ぜひ　あの子……
いえ　今は　族長ですわね。

＊「新しい族長とも
話していって　くださいな。

＊「あんたがたが　お城のみんなを
とむらって　くれたんだってな。

＊「オレのアニキは　城を守る
兵士だったんだ。
ありがとうな。ありがとう。

＊「新しい族長の　話じゃ
お城を　もういっぺん
作り直さなきゃ　ならんようだ。

＊「こいつは　大仕事だぜ！

＊「なんでも　ナイラ河に
いにしえの竜　ティラノスが
あらわれた　そうじゃないか。

＊「あんたら　ティラノスに
乗ったんだって？
うらやましいなあ。

ハディート「目が　さめたか。
今　城を直す算段を
していたところだ。

ハディート「はじめに　おまえたちと
会ったのが　あの城だったな。

ハディート「あの時は　これほど
世話になるとは　思わなかった。
あらためて　礼を言わせてもらう。

ハディート「……おまえたちに会って
おれは　変わったような気がする。

ハディート「……まあいい。

ハディート「村からの　礼だ。
村の貯蔵庫にある宝を
好きなだけ　持っていくといい。

ハディート「これからの旅に
役立ててくれ。

ハディート「おまえたちに
神と　大地の精霊の
導きが　あらんことを！

＊「こう　当たり前のように
朝がくると　今までのことが
夢のようですわ。

＊「旅の方　ありがとうございます。

＊「女王さまも　戻られ
魔王像も　くずれた。
けれど　お城の人たちは……。

＊「いいえ　悲しんでばかりは
いられません。わたくしたちも
できることを　しなくては。

＊「闇は　去り
ふたたび　太陽が世界を
照らし出しました。

＊「旅の方と　新しい族長と
なにより　女王さまの
おかげですわ。

＊「なんと！　骨から竜が
よみがえるとは。
まったく　たまげたわい。

＊「あの世に行ったら
前の族長に　ゆーっくり
話して　やらんとのう。

＊「みんなが　帰ってきた！
お日さまも　もどってきた！
ああ　うれしいねえ。

＊「ゴロゴロゴロ……。

＊「砂漠に　満ちていた
邪悪な空気は　消えた……ほう。

＊「女王さま　新しい族長
旅の者……　３つがそろって
邪悪に　勝った……ほう。

＊「忘れない……　おまえたち。
感謝する……　ほう　ほう。

（教会）

＊「おお　お客人！
いやはや　あんたがたには
世話に　なりましたな。

＊「族長より　話は聞いております。
どうぞ　ご自由に　入りなされ。

＊「あらあら　いやだわ
家の中　ちらかってるでしょ？

＊「ずっと　寝込んでたから
おそうじも　してなくって。
はずかしいわ。

＊「魔物は　もういない。
おれたちは　助かったんだ！
ありがとうな　旅の人！

＊「ようようよう！
砂漠の英雄にして　族長の友！
いやー　よく寄ってくれたね！

＊「他ならぬ　あんたがただから
タダで　もってきな！
……と　言いたいとこだが。

＊「なんていうか　オレも　生活が
かかってるからさ。
この笑顔で　カンベンしてくれ！

（道具屋）

学者「ぶつぶつ……　ん？

学者「おお　おまえさんか。
そういえば　礼がまだじゃったな。
連れてきてくれて　ありがとうよ。

学者「ところで……　勝手を言って
悪いが　わしは　この世界に
残ることにした！

学者「なあに　身内も　おりゃせん。
わしが　戻らなくても
誰も　困らんよ。

学者「発掘の仕事は　いつも
霧の中を　手さぐりで
進んでいくようなもの。

学者「じゃが　失われた知識　真実の
全てが　ここには　残っておる！
わかるか？　この喜びが？

学者「たった数時間で　今までの
一生よりも多くを　学べるのだ。
それが　どんなに……。

学者「……ああ　今　わしは幸せだ。
ほんとうに　何より幸せだ。
ありがとう。　礼を言うよ。

学者「そうだ　もしも　元の時代へ
帰ることがあったら　発掘現場の
男に　これを渡してくれ。

学者「あの男は　よく働いてくれた。
……頼む。現場のハシゴの前で
見張っている　男だ。

アルスは　考古学者から
お金と手紙を　受け取った！

学者「最後まで　世話をかけるな。
ありがとう。　おまえさんの
旅の無事を　祈ってるよ。

学者「気を　つけて……。

学者「なんじゃ　なんじゃ。
わしのことは　心配するな。
これでも悪運の強いほうでな。

学者「さあ　行った行った！
今　いい所なんじゃ。
ううむ　この文字は……。